2001年6月1日

5月25日公判の記録

警察見張番・萩野谷敏明


 

平成12年(ワ)第2740号 損害賠償請求 事件

原告 久保佐紀子外
被告 伊藤順通 外

ブロック標本不提出の理由書
平成13年5月21日
横浜地方裁判所 第9民事部 合議係 御中
被告 伊藤順通 代理人 弁護士S

被告 伊藤順通医師が現在保有している亡久保幹郎の組織標本作成の際のブロック標本を提出しない理由は、「提出の必要性が存在しない」ことである。なお、被告伊藤順通医師がなした亡久保幹郎の結果を追検証する重要証拠を全て提出してしまうことにもなり、本件鑑定の経過若しくは結果如何により、更に適正な鑑定を行うことになるかも知れないことに付き、支障が存するためである。以下において理由を述べる。

一、本件鑑定の目的は、被告伊藤医師が保存する臓器片が亡久保幹郎のものか否かをDNA鑑定の方法によって鑑定することが主たる目的である。従たる目的として亡久保幹郎の死因が、心筋梗塞であったか否かという点の二点である。そのための資料として、亡久保幹郎の現存臓器片を全て、鑑定人に引き渡してある。
   鑑定の目的を達成するためには、充分な資料である筈である。当職の調査によれば、ホルマリン固定された臓器片からでもDNA鑑定は可能である。
   親子ではないという否定の鑑定は100%に近い鑑定が出せ、親子であるとの肯定の鑑定については、鮮血等でDNA鑑定する場合に比して、確度は落ちるが、可能であるとの調査結果を得ている。
   そして、その際、DNA鑑定の資料として、パラフィンブロック及びプレパラート標本と臓器片とを比較したばあい、パラフィンブロックは、ホルマリン固定に加えて、更に熱処理等が加わるためにDNA鑑定の資料としては、ホルマリン漬の臓器片と比べて、より正確性を期し難い資料であって、臓器片の他に更にプレパラート標本(パラフィンブロックを含む)の存在が本件鑑定の正確性を増すものではないことが、医学的理論的結論とするとの調査結果を得ている。

二、また、心筋梗塞か否かについては、ホルマリン固定された本件心臓を観察することによって専門家であれば容易に判断が可能であるとの事である。従って、現在鑑定人に引き渡してある資料以上に本件鑑定に必要な資料はないのであって、ブロック標本をこれに加える必要性は全く存しないと考える。

三、ところで、鑑定人よりの求釈明事項を検討するに、中には、鑑定に必要な項目とは考え難く、何故、このような求釈明をするのか疑問とせざるを得ない項目が少なくない。被告 伊藤医師としては、自己のなした司法解剖の検案結果を担保する資料を、全て引き渡してしまうには、強い不安を感じている。
   ブロック標本は、本件鑑定に必要というものではなく(ブロック標本より作成されたプレパラート標本は、鑑定人のもとに提出しており、プレパラート標本を鑑定に必要な限度において損壊することも承諾している。)被告伊藤医師としては、場合によっては独自にDNA鑑定するということも考えている。
   その場合には、資料としては不充分であるが、現在あるブロック標本を使用することになるが、これも引き渡すことについては、少なからぬ躊躇を感ずるといわざるを得ない。

四、鑑定人が、本件鑑定に際して、ブロック標本がどうしても必要不可欠というのであれば、その必要性の合理的理由を明示すべきであり、これを待って、引き渡しの可否(一部の引き渡しも含み)を検討することが相当である。
 


 


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