今回は、原告側に新たな証拠資料があり、筆者にとっても、いささか期するものがあった公判である。
原告と筆者は、公判に先立ち「解剖はされたと認定できる。嫌疑なし」とした平成12年2月23日の横浜地検の裁定は納得できないとして、同地検にねじこんでいた。
不起訴案件については、その理由は述べねばならないものの、不思議にも関連する証拠を出さなくてもよいことになっているのが、わが国の法律である。この無理なものを要求したのだ。しかし、既に異動になっていた土持敏裕検事のあとを引き継いでいる「特別刑事部」は、
特例として制限付きながら一部は出しましょうという姿勢を示し、下記の証拠写真の撮影を原告に許可したのである。
「右立会人(伊藤順通医師)が示したビニール袋入りホルマリン漬けの久保幹郎の臓器(心臓、その他臓器入り)を解剖台の上に置き、白色プラスチック製の皿を敷いて撮影した」写真4枚。 |
(1)「検視規則」によれば、「人相、全身の形状、特徴ある身体の部位、着衣その他特徴のある所持品の撮影」を行わねばならないことになっている。したがって、本人と特定できるような顔の撮影はもとより、解剖中の撮影記録も残るのが「司法解剖」である。しかし、それら詳細な写真類が存在しないこと。
(2)上記の撮影日時は不起訴判定の1ヶ月前、平成12年1月14日になっている。これが、ありあわせの他人の臓器を作文用に袋詰めにしたものでなければ、実に30ヶ月もの間、監察医は久保幹郎氏の臓器を「ホルマリン漬け袋詰め」状態で維持したことになる。
(3)被告が説明する臓器の保存状態は、心臓その他ビニール袋詰め→円筒形シリンダに心臓単体を保存→心臓その他プラスチック・タッパ入り、と変化したこと。
相変わらず短時間で終わった公判だが、今回は原告・被告の間で多少のやりとりがあった。
■パトカー巡査2名の個人責任を問う原告側からの準備書面
なお作成中であり、8月15日頃、原告側弁護士(大野)から裁判所に送られることになった。この遅れについて原告側弁護士は陳謝した。
■ブロックと履歴
原告側弁護士(今村)が、前回の「ブロック不提出」(被告作成)によれば、被告はブロックと来歴について、提出する意志はないのかと質したところ、被告側S弁護士は「来歴?何の来歴か?」と声を荒げ、原告側弁護士から「怒らないで下さいよ」という一幕があった。
これに対し、原告側弁護士は、上述の新たに地検よって提出された「摘出臓器」の保管状況写真を示し、これが去年の1月の状態である。今年の1月〜3月の間は円筒形シリンダ入りであり、4月にはプラスチック・タッパ入りに変っている、その間の薬品処理など「来歴」の記録であり、DNA鑑定人押田教授が必要であるとして、被告に提出を求めているものである、と説明した。
ここで中野裁判長が割って入り、「鑑定人の関係は裁判所でやるので、意見があれば裁判所に言って欲しい」と述べた。
また、ブロックについて被告側S弁護士は、次のような不得要領の対応を示した。
■県の代理人からの要請
県に対して言うべきことがあるか、と代理人から問われ、原告側弁護士(今村)は、そのつもりで準備している、と応えた。
■次回公判の日取り
8月31日午後3時、新築後の庁舎504号と決定して散開。
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