2003年5月1日
HP管理人・萩野谷敏明


■DNA正式鑑定書
■原告側準備書面(4月25日付)
■「被告伊藤の意見書」(平成15年3月31日付押田鑑定書に対する意見)
■「被告伊藤の意見書」の問題点(HP管理人)


4月25日公判の記録


 押田教授によるDNA正式鑑定が提出されてから初めての公判となった。3月末の公判で、裁判長から、DNA正式鑑定を踏まえて、原告の訴求因を整理して提出するよう原告に要請があったため、今回の裁判では原告から訴求因に関する「準備書面」が出されている。
 その要点は、伊藤監察医が原告に交付した「死体検案書」と、司法解剖に立会ったとする保土ヶ谷署・斎藤清巡査部長との関係を原告の請求因において整理してもらいたい、ということであった。
 「死体検案書」は、時効を阻止するため、これまで原告から何度も交付申請がされ、数枚が発行されている。裁判では、その真偽が問題になっているところ、当初のものと、その後のものと、検案書の記載内容に対して、原告がどのような損害を被っているというのか、明確にすべきであるという要望が、被告県・監察医側からも出されていた。
 司法解剖の事実がなく、「死体検案書」の記載が虚偽であれば、ひとつには伊藤医師の監察医としての責任が生じ、また、警官が立会ったとされるので、県警すなわち県の責任が生じる。監察医は県の嘱託医なので、国家賠償法からは、どちらも県の行政責任ということになる。
 しかしながら、解剖の事実がなかったとすれば、それは伊藤監察医の個人的行為としての責任になるのか、それとも、県警すなわち県が監督するもとでの司法解剖行為であるから、全てが県の行政責任のなかに含まれることになるのか、法律解釈の問題として原告側が整理するよう、裁判長から求められたのである。
 今回は、DNA正式鑑定が提出されたため、改めて、原告側から訴求因について整理がされた。

(→準備書面)

 伊藤監察医側代理人(伊藤医師本人は出廷していない)から、DNA正式鑑定に対する反論が「被告伊藤の意見書」という形で提出されている。その要点は下記の通り。

  1. 亡久保幹郎氏の遺髪など、本人の遺留物と比較すべきところ、親子鑑定がされている。実子であることを仮定の前提とした鑑定の手法には問題がある。
  2. 「改良DNA精製法」という、押田鑑定人独自の手法による解析は、DNA鑑定として確立された手法ではない。
  3. 発色が不鮮明なのにDNA型を断定しており、ずさん、不正確である。
  4. 押田教授は鑑定人就任以前から論文で自分を批判するなど、「敵意もしくは偏見」を持っている。裁判所の要請もないのに「中間報告書」を提出、その内容を一方的にマスコミに公表するなど「裁判所から選任された公正な鑑定人にあるまじき行為」を行い、あえて不備を探そうという不公正な鑑定を行っている。
  5. よって、亡久保幹郎の兄弟の細胞ミトコンドリアと比較するなど、再鑑定を求める。
これに対し、原告代理人弁護士からは、 との主張がされた。

 この原告側の主張に対し、裁判のルールからしても奇妙な主張が、監察医側代理人から行われた。押田教授の証人尋問は必要がない、鑑定そのものにも意味がない、というものだ。原告側大野弁護士から「意味がないとは、どういうことか」と聞かれ、監察医側代理人は次のような回答をしている。
 「この裁判は、交通事故による死亡か、病死かを争い、それぞれの違いによって、原告側が受け取るべき保険金に違いが生じたために、原告が損害を被ったとして伊藤医師を訴えているものである。DNA鑑定の必要性について、被告側は当初から疑問を持っており、DNA鑑定が裁判全体のなかで、どのような意味を持つのか、もう一度、問い直したい。」
 裁判のルールからしても奇妙、という理由は、通常、ある鑑定の内容に疑問があれば、鑑定人を裁判所に呼び、本人に対し直接に疑問を投げかけ、取られた手法や結論に至った過程を詳らかにするのが当然である。反論を文書化して出して、それでおしまい、ということは「稀有」のことであろう。
 加えて、原告側代理人からは、「再鑑定は不要と確信するが、万が一、再鑑定となった場合、現在押田鑑定人が保管している臓器が劣化し、鑑定の有効性が問題になるので、迅速に行う必要がある」という指摘がされている。

 今後の日程と裁判の進め方に関し、裁判長は、県側金子泰輔代理人に、DNA鑑定に対する反論をするかどうか、また、押田鑑定人を県側としても裁判所に呼び、証人尋問するかどうかを訊いている。
 これに対し、金子代理人からは「県としても反論を作成している。押田鑑定人の証人尋問は、今は特に求めないが、将来は、その可能性があるだろうと思われる」との発言があった。
 裁判長は「反論作成の時期は区切ってもらいたい」としたうえ、さらに原告・被告双方との相談・合意を経て、次のように言明した。

以上


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