神奈川県警・覚せい剤犯隠蔽事件

下記は、ジャーナリスト犀川博正氏から提供された地検資料(関係者の供述調書)及び新聞記事からHP管理人がまとめたものです。

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―神奈川県警・覚せい剤犯隠蔽事件―
  原判決は,幹郎の解剖所見等を記載した検視調書・解剖立会報告書・備忘録・死体検案書・死体検案書が所定の手続きにそれぞれ従って作成されていることを「解剖有り」の事実上唯一の積極的根拠として挙げる。
  控訴人県も、詳細かつ具体的な記述があるとして同様の主張をする。被控訴人伊藤監察医も「今日の警察組織の中で、組織ぐるみで事実を隠ぺいするなどということは出来るものでではない。当時作成された捜査記録等の公文書が極めて信頼性の高い証拠であることは多言を要しない」【準備書面(1) P17】とする。
  しかし,第三者が作成した書面であればともかく,これらの書類は訴訟の一方当事者である保土ヶ谷警察署所属の警察官(齋藤ら)及び同署と日常的に仕事を共にしている監察医(伊藤)が作成したものに過ぎない。
  これらの書類の記載事項を事実と認めるためには、少なくとも客観的な非供述証拠(亡幹郎を外表皮から解剖している写真、亡幹郎のDNAと一致する臓器)が必要である。
  警察が虚偽の捜査書類を作成した例など日常頻繁に新聞報道されている。特に、神奈川県警においては、次の事実がある。
    (1)
    平成3年(1991)に「不祥事隠ぺいマニュアル」が存在した。
    (2)
    本件発生とほぼ時を同じくして「覚せい剤隠ぺい事件」が発生している。
    (3)
    平成11年12月の読売新聞による県警警察官に対するアンケートで、未公表の不祥事を知っているとした警察官は24%、もみ消しの指示があれば従うとした警察官は42%にも昇っている。 (添付資料・読売アンケート参照)
「覚せい剤隠ぺい事件」では、県警監察官室が中心になり、外事課、薬物対策課と三位一体となって、次のような違法行為が行われていた。
    (1)
    覚せい剤犯である警察官が、他県の警察(警視庁)に逮捕されないように、偽名を使ってホテルに匿った。
    (2)
    同警察官から覚せい剤の尿反応が陰性になるまで採尿を続け、陰性になってから薬事対策課に引渡すという事件揉み消し工作を行った。
    (3)
    科捜研に尿サンプルを渡す際、警察官の名を「氏名不詳」と偽った。
    (4)
    あらかじめ令状に基づかない非合法な手段で家宅捜索を行い、覚せい剤・注射器を押収し、その後、正規の令状に基づく家宅捜索を行うことで、さも厳正な捜査を行ったようにみせかける偽装工作を行った。
    (5)
    押収した覚せい剤・注射器等の証拠物を薬事対策課に引き渡さず、外事課のロッカーに保管、その後に廃棄する証拠隠滅工作を行った。
    (6)
    事実は12月13日に、覚せい剤犯である警察官の身柄を確保し事件の端緒があったにも係らず、その日付を同警察官が退職後の12月20日と偽り、既に発見されている覚せい剤・注射器を故意に書類に記載せず秘匿し、「酔っていた、栄養剤の認識であった」などと罪を否認する、本人も思いついていない虚偽の内部書類2通(認知報告書)を作成した。
    (7)
    薬事対策課の取調べにあたり、覚せい剤犯である警察官に、それら内部書類に基づく虚偽の供述をさせた。
    (8)
    覚せい剤の記載がない虚偽の上申書を本人に提出させ、それに基づいて退職辞令を交付した。
  そして、これら隠ぺい工作の具体的指示を行った司令塔は、本来は警察官の非違行為を取り締まるべき警務部監察官室(本件の神奈川県指定代理人らが所属する部署)だったのである。
  「子は親の背中を見て育つ」という。「一事が万事」ともいう。部下もまた上司の背中を見て育つものであり、大きな内部犯罪を許せば、大小無数の内部犯罪が蔓延することは、警察組織も民間企業も変わりがない。
  本件が発生した平成9年7月当時、神奈川県警は、まさに組織ぐるみで覚せい剤事件の隠ぺい工作を行い、県警幹部が内容虚偽の書類を多数作成していたのである。
  本件の発生当時、神奈川県警が隠ぺい体質にあったことは疑う余地のないことであり、冒頭の書証の記載が詳細かつ具体的であるからといって、客観的な非供述証拠がない以上、それらを鵜呑みにして信を置くことはできない。


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