情報公開請求では出てこなかった「解剖立会報告書」。これに添付されている「心臓の写真3枚」が、事件から2年後の地検捜査の際に作られた「司法解剖鑑定書」にも添付された。「解剖立会報告書」にまつわる問題点は、次の二つに集約されるだろう。
- 解剖の時間が8時40分から10時10分となっていること。
県警側の主張では、司法解剖の時間は7時30分から8時35分にかけて行われたことになっている。この時間のずれについて、00年2月24日の神奈川新聞を参照すると、当時の大木宏之監察室長は「許可状に合わせて解剖を始めたように書いたようだ」として、作成者の斉藤清巡査部長を所属長訓戒としている。一方、原告の説明では、子息と吉川葬儀社(仮称)が遺体を迎えに自宅を出発したのが7時20分、遺体を自宅に迎えたのが8時20分頃のことなので、このような司法解剖は時間的にも有り得ない、ということになる。
- 「心臓の写真3枚」が、誰のものかわからず、枚数も異常に少ないこと。
原告側弁護士作成の資料から、この問題点を抜粋すると「そもそも、解剖立会時に作成された写真であれば、通常は解剖室、解剖した人全体、摘出した人体の部位と臓器全体、臓器から切り出した部分等々が、単独写真だけでなく、それぞれ関連性がわかるように同時に多数枚撮影されるのが普通である。本件のように切り出した臓器の一部のみ、しかもわずか3枚の写真しかなかったというのは、あまりに不自然というほかない」ということになる。ちなみに、筆者が裁判活動に参加した「戸部署容疑者銃殺疑惑事件」では、司法解剖(執刀医は津田征郎監察医)の撮影枚数は50枚である。
(タイプアウト文)
(実際の書面)平成9年7月22日
神奈川県保土ヶ谷警察署神奈川県保土ヶ谷警察署長
司法警察員
巡査部長 斉藤 清(印)
司法警察員
警視 伊藤勝也殿解剖立会報告書 平成9年7月19日 横浜市保土ヶ谷区岡沢町82番地先路上において発生した被疑者不詳に対する殺人被疑事件について
被害者横浜市泉区(番地等略)
の司法解剖に立ち会った結果は次のとおりであるから報告する。
書籍販売業
久保幹郎
昭和18年4月22日生(54歳)記
- 1解剖日時
- 平成9年7月19日午後8時40分から午後10時10分までの間
- 2解剖場所
- 横浜市中区蓬莱町(番地等略)
横浜犯罪科学研究所- 3執刀医
- 横浜犯罪科学研究所
監察医 伊藤順通- 4鑑定処分許可状
- 平成9年7月19日午後8時25分発付
横浜地方裁判所
裁判官 高野芳久- 5解剖結果
- 死因
心筋梗塞(病死)- 死後経過時間
死体現象などから解剖開始時現在死後18時間内外を経過
(平成9年7月19日午前3時00分ころ)- 胃内容
空虚- 心臓
心肥大拡張、左心室後壁繊維化及び左冠状動脈回旋枝硬化- 肺
両肺高度うっ血水腫- 脾臓
萎縮- 肝臓
中等度脂肪変性- 6.検案所見
- 後頭窩穿刺により脳脊髄液は水様透明である。
- 腰部右側に11.0センチ×2.0センチ大の擦過傷
- 右膝蓋骨部に1.0センチ×0.7センチ大、右下腿上部外側部に1.0センチ×0.5センチ大のいずれも表皮剥脱。
- 左下腹部、背部右側、左上腕末端外側部、左大腿上部前面等にいずれも圧痕等が存する。
- 7.検査等
- 血液型及びアルコールの有無については検査中。
- 8.参考事項
- 本死体に認められる傷の部位を明らかにするために本職が作成した「被害者の傷」と題した図面一枚と解剖時に撮影した写真3枚を本書末尾に添付する。
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添付図 | 添付図 |
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