2002年4月13日
筆・萩野谷敏明
DNA鑑定中間報告の概要

4月12日の法廷で、DNA鑑定人・押田茂實日本大学教授の中間報告が提出されていることが明らかになりました。ここでは、その概要を速報します。

鑑定事項としては、1)被告が久保幹朗氏のものと主張している心臓その他の臓器片が、DNA親子鑑定により、その家族のものと比較して同人のものであると認められるかどうか。2)前記の心臓その他の組織片から、その死体の死因は何である考えられるか、の二つが争点です。以下、「中間報告」から抜粋します。

=============「中間報告抜粋」始め==============

検査所見

  1. 平成13年4月6日、横浜地方裁判所民事第103法廷において受領したプラスチック容器入り臓器とプレパラート染色標本67枚。
      1) プラスチック容器入り臓器は写真1〜5のようであり、心臓1、細片21であった。
      2) プレパラート染色標本67枚は、写真6のようであり、これをその順序に並べると写真7・8のようになり、@東京医科大学第二病理とA東京医大第二病理教室と印字された2種類のラベルが使用されていた。 このプレパラート染色標本67枚のうちに対照と記載された染色標本も混在していた。

  2. 平成13年8月31日、横浜地方裁判所において受領したブロック標本18個。

添付写真(一部省略)
写真1
写真2
写真5
写真6
写真7
写真8

(医学的専門内容のため中略)

まとめ

  1. 提出されたブロック標本17個はプレパラートHE染色標本と形態学的に一致したが、肺臓2個と一致するブロック標本2個は提出されていない。また、プレパラートHE標本と形態学的に一致しないブロック標本が1個あった。

  2. 提出されたブロック標本から判定できたPCR法によるPM型のLDLR型・GC型およびHLA-DQA1型は、妻と実子から推定された亡久保幹郎氏のDNA型と矛盾していた。

平成14年4月8日 日本大学医学部法医学教室 鑑定人 教授 押田茂實(印)

 
=============「中間報告抜粋」終り==============

解説:(以下は筆者による解説です)

上記の「まとめ1」は、提出された証拠物の整合性に関するものです。 一般に、臓器はホルマリン漬けにすると、長期間のうちに組織が破壊されDNAを含む諸鑑定が難しくなるとされ、そのため、一部を切り取ってロウで固めたブロック片として保存します。また、ブロック片のままでは顕微鏡で見ることができないので、ブロック片を薄く切片してプレパラート標本にします。したがって、臓器・ブロック片・プレパラート標本は3点セットの状態で保存され、また証拠として提出されます。

提出された証拠物を表にすると、以下のようになります。

心臓1
細片21
プレパラート67枚
  • 東京医科大、 東京医大2種類のラベル使用。
  • 対照と記載されたものあり。
ブロック18個
  • うち17個はプレパラートと一致。
  • うち1個はプレパラートと不一致。
  • 肺臓2個の(プレパラートと)一致すべきブロック2個は提出されていない。

(なお、容器が入れ替わったことによる希釈率の違い、それぞれの臓器・臓器片にかんする医学的な説明である「指示書」は、現在なお被告から提出されていません。)

上記の「まとめ2」は、二つの検査段階からなっています。第一段階は、久保夫人と実子三名の採取血液から、それぞれのDNA型を割り出し、その組み合わせから亡久保幹郎氏のDNA型を推定するもの。第二段階は、こうして割り出された亡久保幹郎氏のDNA型の因子として、必ず存在しなければならない因子が、提供されたブロック標本から抽出されたDNA型と一致するか否かを検討するもの。そして、判定結果は、一致しない、矛盾している、というものです。

また、「中間報告」では「実子が3人いることにより、亡久保幹郎氏のDNA型の因子は、かなり狭められた」として、その鑑定内容の正確性について触れています。


 


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