2002年11月16日
筆・萩野谷敏明
10月25日公判の記録(パトカー巡査2名の証人尋問)


1.被告警察側からの尋問と証人発言
2.原告弁護士側から証人への尋問
2.1 村井証人への尋問
2.2 青地証人への尋問
3.裁判長・裁判官から証人への尋問
3.1 村井証人への尋問
3.2 青地証人への尋問
4.今後の裁判運営について
まえがき
以下は、02年10月25日、横浜地裁で行なわれた村井学巡査部長(当時)・青地隆宏巡査長(当時)への証人尋問の内容要旨につき、傍聴者である私がメモから書き起こしたものである。

2人は、事件当日、保土ヶ谷2号パトカーで現場に駆けつけた警察官である。証人尋問は1時半から4時まで、2時間半にも及んだ。要旨作成にあたっては内容に正確を期したが、後刻、裁判所がテープから文章に起こしたものと照らし合わせる予定であり、その際、一部に訂正を加える場合があることを留意せられたい。

公判は、まず村井証人・青地証人の身分が現職の保土ヶ谷警察署地域課担当であること、その職務が「地域住民の生活へのサービス、平穏の確保」にあること、そして「良心に従い、何事も隠さず、事実をありのままに述べることを誓う」との宣誓で始まった。

証人尋問は、1.最初に被告警察側からの尋問と証人発言、2.次に原告弁護士側からの尋問と証人発言、3.最後に裁判長・裁判官からの尋問と証人発言の順で行われた。

1.被告警察側からの尋問と証人発言

被告警察側からの尋問と証人発言は、これまでの警察側の主張をなぞるものであり、概ね平成12年9月1日付の被告警察側「答弁書」の交差点内に関る事情に沿うものである。ただし、原告・裁判所側の質問の過程で、若干の補足的内容もみられた。そこで、上記「答弁書」の記載をもとに、新たな内容を補足する形で下記の警察側主張の記述を行い、2人の証言内容を振り返るものとする。


 平成9年7月18日深夜から翌19日未明にかけ、保土ヶ谷2号パトカーで横浜市内を警ら中であった村井巡査部長と青地巡査長は、本部通信司令課から「110番通報、三ッ沢上町交差点にジープが駐車している。現場に向い調査せよ」との「駐車苦情」を受け、浅間下交差点から13号線を通って同交差点に至り、交差点内に駐車している幌付ジープを発見した。
 たまたま、左折専用レーンを走行していたので、いったん岡沢町方向に進行したのち、Uターンして交差点に戻り、新横浜駅方向のレーンに入り、交差点内で再びUターン、幌付ジープの後ろ約3〜4メートル付近に停車した。現場到着は19日午前0時半頃、司令を受けてから到着まで約10分ほどであった。
 村井巡査部長は、保土ヶ谷2号パトカーの車内からジープを観察したところ、ハザードランプを点滅し、エンジンはかけたままの状態で、運転手の姿がジープ内に見えなかったことから、運転手は何か所用があって交差点に車をとめ、車から離れていると判断し、車載マイクで「ジープの運転手さんは車に戻ってください」と2〜3回広報し、付近に呼びかけを行った。
 一方、青地巡査長は、パトカー停車後、直ちに降車してジープに近づき、車の右側に回って、窓越しに車内を見ると、人が前席で横になり寝ているのが見えたので、運転席側のドアーの取っ手を回したところ、ロックされていなかったことから、ドアーを開け、前席で横になっている人が中年の男性であることを確認した。
 「なかに人が寝ているよ」と青地巡査長から連絡を受けた村井巡査部長は、パトカーのトランクから「矢印誘導板」を取り出して必要な交通安全措置をとったうえ、ジープに近づいて、青地巡査長と車内を確認した。
 車内には、灰色系のTシャツ、灰色系のズボンを着用した、年齢40歳から50歳ぐらいの男性が一人、頭部を助手席の上に乗せ、両足は運転席の上に乗せ、両膝を立て、体を「く」の字に曲がらせ、仰向けの状態であった。
 更に詳細に男性を見分したところ、男性は普通に呼吸し顔色も変ったこともなく、苦悶の様子もないこと、着衣に乱れがないこと、頭部をはじめ身体露出部に外傷や出血がないことを確認した。また、靴が左右とも運転席の床に前向きに脱ぎそろえられており、靴の右横に腕時計が置かれていた。
 このとき、青地巡査長は、男性の左立膝を軽く揺すりながら、「起きて起きて」と数度声を掛けたものの、男性は目を醒まさなかった。また、車内から軽い酒のような臭いがしていたが、床に吐寫物はなかった。
 続いてジープの外見を確認したところ、前部左側タイヤがパンクしていること、前部左右のフェンダーが凹損していることが確認された。なお、ジープ周辺のガードレールには、同ジープが接触した痕跡はなく、また、本件取扱い前数時間に、いわゆる当て逃げ交通事故の事件通報は把握していなかった。
 右折専用レーン停車しているジープが交通妨害になると考えた警察官2人は、とりあえず安全な位置にジープを移動させる措置を取った。
 ジープの移動は、村井巡査部長が車に乗り込み、「男性の両足を左肩越しに後ろの座席にやって」(注:村井証言)運転席にすわり、青地巡査長が付近の交通誘導をするなか、「ホンダクリオ三ッ沢店」前路上に移動する形で行った。
 ジープを移動させる際、村井巡査部長は、運転席側に揃えてあった靴を助手席側に移した。また、その際、ジープのフロントガラスにこぶし大の蜘蛛の巣上のひび割れを発見した。
 ジープの移動後、青地巡査部長は男性の右肩を右手で軽く叩きつつ、「起きて起きて」と数回繰り返す動作をしたが、その際、男性は首を僅かに1〜2度左右にゆっくり振り、右腕を上に動かすような仕草をした。
 続いて、村井・青地両警察官は、脳内出血の有無を調べるために「対光反射」の検査を行うこととし、青地巡査長が右手親指と人指し指で、男性の右目のまぶたを開け、左手に持った懐中電灯の光を照射したところ、男性の瞳孔が直ちに収縮した。
 その際、男性は、光に反応してか、顔を左右に振り、懐中電灯の光をさえぎるように、右手で払いのける仕草を2〜3回した。
 青地巡査長が右目に続いて左目に「対光反射」検査を行ったところ、同じく瞳孔が収縮する反応を確認した。
 右目の「対光反射」結果を確認した村井巡査部長は、左目の「対光反射」検査の際は青地巡査のそばを離れ、車両の所有者や運転者を特定できるものはないかと車内を観察したが、運転免許証や車検証の発見に至らなかった。
 これらの観察結果から、村井・青地両警察官は、ジープ内で寝ている男性は、酒に酔って寝ているものの、酒臭の程度並びに挙動から、いわゆる「泥酔者」ではないこと、外傷がなく、着衣に乱れがないことから、犯罪の被害の疑いがないこと、平静に呼吸しているほか「対光反射」検査にも反応することから、同人が負傷者ないし急病人ではないと判断し、ジープが交差点内に停車していた原因は、男性が酒に酔っていずれかの場所で自過失事故を起こし、車両が正常に動かなかったため、信号待ちで停車した際に、そこが安全な場所であると誤信し、寝てしまったものと認めた。
 そして、男性に対する差し迫った救護措置の必要性は認められず、このまま車内でしばらく休んでいれば、酒臭の程度からして、比較的短時間のうちに目を覚ますことが、経験則から推し測られたため、目を覚ませば自己の意思で徒歩もしくは車両を使い帰宅できるものと判断した。
 村井・青地両警察官は、この判断のもと、同車のエンジンを切り、サイドブレーキを掛けた後にドアを閉め、ジープから離れて保土ヶ谷2号パトカーに乗車、現場を離れて所定の警ら活動に移行した。
 なお、保土ヶ谷署の中島警部補は、午前0時43分頃、青地巡査長から、署活系無線機で、ジープのナンバープレート登録番号の連絡を受けた。同警部補が保土ヶ谷署の端末から身元を割り出した結果、車両所有者が泉区飯田町在住の久保幹郎氏であると判明したため、NTTからの回答をもとに0時51分と53分に架電したが、応答はなかった。

◎事件現場◎

2.原告弁護士側から証人への尋問

2.1 村井証人への尋問
(下記は様々な尋問・証言のなかからポイントを抽出し、問答のおおよその状況を述べたものである。)
■久保幹郎氏の容態
(原告側弁護士)車の破損状況、またハザードランプを点滅させていることから見て、警察官としては色々な可能性を考えなければならないのではないか。左前輪はパンクして車体が低くなっている。低い方の助手席に頭を置いて「寝ている」のは不自然であり、客観的に見れば、「人が倒れている」というのが正しいのではないか。
(村井証人)事故との認識はありました。しかし、本人の呼吸は正常であり、顔色に異常もなく、外傷もないので、その時は、私は「寝ている」と思いました。自分の経験則でも、タクシーの中などでつい寝入ってしまう人があり、少しすれば起きることがあるので、私は久保氏が寝ていると思いました。

■広報
(原告側弁護士)第一通報者である市川三郎氏(仮称)が、パトカー到着を確認している。その際、拡声器で「ジープの運転手さんは車に戻って下さい」という広報はなかったと証言しているので、貴方の証言と矛盾する。
(村井証人)それは、わかりません。私としては確かに広報をしました。間違いありません。

■酒気帯び
(原告側弁護士)「酒のような臭い」とはあいまいな表現である。実際にどのような臭いだったのか。
(村井証人)ビール・酒・ウィスキーなどの特定はできないが、酒を飲んでまもないような新鮮な臭いが、車のドアを開けたときから継続的にしていました。
(原告側弁護士)実際に久保さんの息から確認しているか。
(村井証人)久保さんの顔・口からはしていません。
(原告側弁護士)普通はするのではないか。また、客観的検査の方法として、パトカーにはアルコール検知機・アルコールメータなどがあるはずだ。
(村井証人)アルコール検知機は、本人が自分で風船を膨らませないと検査できません。寝ている人を無理やり起こしてまで確認しようとは思わなかった。また、アルコールメータは搭載していません。
(原告側弁護士)実際には久保氏の血からアルコールは検出されていない。そのことをどう考えるか。(注意・下記参照)
(村井証人)自分には分かりません。
(原告側弁護士)本当は酒の臭いなどしていなかったのではないか。
(村井証人)いや、していました。
(原告側弁護士)よしんば酒を飲んでいたとしても、酒気帯び運転ではないか。そのまま放置して警ら活動に戻るとはどういうことか。現場までが酒気帯び運転、放置したのち目が醒めて帰れば酒気帯び運転の奨励ではないか。
(村井証人)酒気帯びで運転しているところを我々は見ていません。だから、警察としては酒気帯び運転で立件するのは難しいと考えました。また、目が醒めて帰る場合、車は壊れていますから、自分で歩いて帰ると思ったのです。

    (傍注)
    19日11時、久保幹郎氏はホンダクリオ店員の119番通報により、現場から500m離れた横浜市立病院に死亡している状態で運び込まれた。その時に採取された血液を病院側で調べたところ、アルコールは検出されなかった。また、28日付で伊藤勝也保土ヶ谷署長が「殺人被疑事件」として県警科捜研に依頼した検査結果でも、当日採取した血液からアルコールは検出されていない。

■ジープ移動の状況
(原告側弁護士)ジープ移動の際、久保さんの姿勢をどのように移動させ、運転席に乗り込み、ジープを移動させたのか。
(村井証人)久保さんの両足を私の左肩越しに後ろの座席にやり、それで移動しました。
(原告側弁護士)それは逆立ちの形ではないか。前輪はパンクしているから、移動すれば車に振動もする。うかつとは思わなかったか。
(村井証人)その時は妥当と思いました。
(原告側弁護士)先ほど、車の破損状況の認識について確認があった。運転席側のフェンダーミラーが割れて落ちているが、これは確認したか。
(村井証人)知りません。記憶にありません。
(原告側弁護士)移動中、当然、ミラーで右後ろを見るだろう。
(村井証人)記憶にありません。

■フロントガラスの破損
(原告側弁護士)先ほど、こぶし大の大きさの破損は確認したというが、こんなに大きくはなかったということも言っていた。原告が大きくしたとでも言うのか。どこまでの大きさを確認したのか。(―写真を見せる)
(村井証人)放射状に割れているところまでは見ていません。
(被告側県代理人)意義あり。自然に割れるということもあります。
(原告側弁護士)自分で移動中に見ているでしょう。なぜ、ひび割れを確認できないのか。
(裁判長)いいじゃないですか。ここでは本人の認識を確認します。放射状の割れは現認していないと言っていますから、そういうことで先へ行きます。
(原告側弁護士)事故車なのに、なぜ、写真記録を取っておかないのか。写真を取っておけば、こういうときに主張できるではないか。
(村井証人)わかりません。その時は、それでいいと思いました。

■脳内出血の可能性判断
(裁判長)外傷の確認方法について私から聞きます。髪の毛のなかは見ましたか。
(村井証人)頭を見たかどうか、分かりません。
(裁判長)顔面を中心に目で確認したということですね。
(村井証人)そうです。
(原告側弁護士)ジープを移動し、久保さんの状態を再確認した際、久保さんは話しをしたか。
(村井証人)していません。
(原告側弁護士)呼びかけて応答せず、肩を揺すり、膝をたたいても目を覚まさず話しをしないというのは意識不明というのではないか。
(村井証人)先ほど説明した通り、自分の経験上、タクシーのなかで寝入ってしまう客にも、そういう人がいます。呼吸も平常、顔色に異常がなく、外傷もないし、瞳孔の対光反射も異常がないのだから、寝ていると判断しました。

■対光反射検査
(原告側弁護士)貴方がたは医師ではない。救命看護医でも許されていないことを、やってもいいのか。
(村井証人)我々は医師ではありませんが、警察学校で教わっており、通常の勤務でもやっています。
(原告側弁護士)脳と瞳孔収縮の関係を知っているか。
(村井証人)脳が出血などで働かなくなると、光に対して瞳孔が反応しなくなる。それで脳内出血があれば瞳孔の収縮がなく、逆に瞳孔が収縮すれば正常ということです。
(原告側弁護士)それは違う。脳内出血の場合、初期には正常に収縮し、反応しなくなるのは、ずいぶんと経ってからだ。警察学校では、そのように教わっているのか。そのような方法で通常勤務で行っているなら問題だ。
(村井証人)とにかく、そのように教わり、通常勤務で行っています。

■保護措置をしなかった理由
(原告側弁護士)事故が疑われる車内で意識を失っている人があれば、普通どうするか。
(村井証人)普通は救急車を呼びます。
(被告県代理人)異議があります。「意識不明」の定義があいまいで、「寝る」は「意識不明」に入りません。
(村井証人)とにかく、我々は本人が寝ていると思ったから、救急車を呼んでいないのです。

■身元確認と自宅への通報
(原告側弁護士)ナンバープレートの番号から所有者を割りだし連絡したというが、署活から久保宅への連絡について、確認しているか。
(村井証人)確認していません。
(原告側弁護士)なぜ、ナンバープレートの番号だけで車の所有者と断定するのか。
(村井証人)普通は、車の中の人が車の所有者だからです。盗難届けも出ていませんでした。
(原告側弁護士)車内で発見されなかった免許証は、後刻、久保宅に引き渡されている。実際は、どこにあったのか。
(村井証人)上着のポケットにあったと聞いている。
(原告側弁護士)どこを捜したのか。
(村井証人)ズボンのポケットのなか、それから車の後ろ座席の方です。
(原告側弁護士)ダッシュボードとか、他は捜さなかったのか。
(村井証人)ジープは普通の車と違い、ダッシュボードの位置が違うので、よくわからなかった。
(原告側弁護士)あまりにも異常だ。免許証・車検証がない事故車で、肩を揺すってもひざを叩いても起きない人がいる。病気を疑わないなら、署に連行して職務質問をするのが普通だろう。我々は、そこまで疑っている。署に連れて行っていないか。
(村井証人)連れて行っていません。

■署への報告
(原告側弁護士)この件について本部署活へ報告をしたというが、相手は誰か。
(村井証人)知りません。
(原告側弁護士)ようするに、本人の身元確認もしていないし、再臨場をするなどして本人覚醒の確認もしていない。先ほどの説明では、午前10時、次の警ら活動の当番に、この件の引継ぎもしていない。それを、どう思うか。
(村井証人)その時は、それで妥当と思いました。
(原告側弁護士)妥当だったというが、貴方がたや警察幹部は何人も注意や訓戒処分を受けているのだよね。
(村井証人)報告が不十分ということでした。
(裁判官)報告不十分ということについて、どういう認識なのですか。
(村井証人)車の移動だけを報告したということです。

■その他
(原告側弁護士)最後に確認します。貴方がたが現場にいる間、久保氏は声を発したことはなく、足を挙げたということもなく、目も開けていないのですね。
(村井証人)そのとおりです。

◎村井証言をもとにしたジープ移動の状況◎

2.2 青地証人への尋問
(下記は様々な尋問・証言のなかからポイントを抽出し、問答のおおよその状況を述べたものである。)
■酒気帯び
(原告側弁護士)「酒のような臭い」「弱い酒のような臭い」という言葉がよく使われているが、酒には酩酊期と泥酔期がある。起こそうとしても起きないのは泥酔期であって、「酒のような臭い」「弱い酒のような臭い」という表現とは矛盾するのではないか。
(青地証人)よく、わかりません。
(原告側弁護士)被告の答弁書に「酒に酔って自過失事故を起こし、信号待ちで停車した際に、そこが安全な場所であると誤信し、寝てしまったものと認めた」とあるが、これが、貴方がたの認識、つまり酔っ払い運転という認識だったのではないか。ならば職務質問ぐらいするのが普通だろう。
(青地証人)酔っ払い運転との認識はありましたが、運転するところを見ていないので、立件は難しいというのが警察官としての判断です。

■保護をしなかった理由
(原告側弁護士)ハザードランプを点滅させているというのは、危険を知らせる信号でしょう。別の場所で当て逃げされたなどの疑いは考えなかったか。
(青地巡査長)ハザードは、言葉としては「危険」ですが、一般的に駐停車する場合に点滅させる行動です。当て逃げの連絡通報はありませんでした。

■フロントガラスのひび割れ
(原告側弁護士)ジープの破損について、どの点を確認したか。
(青地証人)左前輪のパンクと前の左右フェンダーの凹みです。
(原告側弁護士)このジープは事件後、暫く保土ヶ谷署の駐車場に保管されていた。自分が担当した事件であり、このジープについて気になったでしょう。フロントガラスのひび割れは見ましたか。
(青地証人)見ました。割れていることは分かったが、大きさは記憶にありません。
(原告側弁護士)クモの巣状のひび割れを見ましたか。
(青地証人)記憶にありません。

■車の閉め切り措置
(原告側弁護士)夏、エンジンを切ってドアを閉めたまま帰れば、クーラーが効かないので暑くなるとかは考えなかったのですか。
(青地証人)真夜中のことでしたので、考えませんでした。

■久保宅への連絡
(原告側弁護士)中島警部補が、ナンバープレートから割り出した久保宅への電話連絡について、貴方は確認しましたか。
(青地証人)現場では確認していません。中島さんが久保さん宅に電話をしたことは、あとで聞きました。

3.裁判長・裁判官から証人への尋問

3.1 村井証人への尋問

(裁判官)先ほど、自分の経験則から、ぐっすり寝入った人が暫くして起きて帰る場合があるとおっしゃいましたが、そのなかに、今回のような事故を起こした車両の例がありましたか。
(村井証人)ありません。
(裁判官)顔を中心に目で確認したということですが、頭頂部のこぶなど、疑わなかったのですか。
(村井証人)よく、覚えていません。
(裁判官)外傷の確認方法をお尋ねしたいのですが、手・足など主に露出部を見たということですね。服をめくって見るなどは、しなかったのですか。
(村井証人)していません。そこまでは警察の範囲外です。
(裁判官)対光反射ですが、警察学校では、光を当てて瞳孔が収縮すれば、正常であるという以外の可能性は全くないと、そういう教え方をしているのですか。
(村井証人)そこまで詳しくは習っていませんが、とにかく、瞳孔が収縮すれば脳内出血はなく、反応がなければ脳に異常ありということで、通常の勤務で行っています。
(裁判官)右フェンダーミラーの破損を確認していないということですが、貴方の言うことを前提としても、事故車の状況から、何らか強い衝撃が運転者に加わったとは考えませんでしたか。
(村井証人)呼吸が正常、顔色も正常、外傷もないので、先ほどの説明のとおり、そのときは考えませんでした。
(裁判官)久保氏本人の身体状況から見て、衝撃が加えられたとか、何らか事故に巻き込まれたなどの可能性を考えなかったのですか。
(村井証人)考えませんでした。
(裁判長)ナンバー照会の目的は、持ち主に連絡することですよね。貴方の認識を前提としても、移動だけで済ませるのではなくて、所有者に連絡をするのが当然でしょう。夜、事故を起こしている車で、久保さんがいたのだから、その状況を家族に連絡するのが、先ほど警官の職務として説明のあった「地域サービス」ということではないですか。
(村井証人)その時は、そこまでで大丈夫と思いました。
(裁判長)今の反省はないのですか。
(村井証人)その時の状況から見て、自分たちの判断は適切だったと思います。
(被告県代理人)久保宅には、署活の中島さんから連絡したのですよね。
(村井証人)はい。
(被告県代理人)久保氏を保護しなかったことについて、あなたの訓戒処分のなかに入っていますか。
(村井証人)入っていません。

3.2 青地証人への尋問

(裁判官)報告をちゃんとしていなかったということで、訓戒を受けたということですが、具体的にどういうことですか。
(青地証人)詳細な報告をすべきところを、簡略な報告にしたので誤解を受けたということです。
(裁判官)よく分かりません。どういうことですか。
(青地証人)車両の移動だけを上司に伝え、事件現場を離れたということです。また、この件で県警の信用にダメージを与えたということもあります。

4.今後の裁判運営について

裁判長から、今後の裁判の運営について原告・被告双方に意見の求めがあった。被告としては、1)交差点内の尋問については、これで十分と認識している。しかし、2)死体検案書をめぐる原告の主旨が不明確なので、これを明らかにして貰いたいこと。3)既に提出している答弁のほかに、求釈明を行う用意があること、などが伝えられた。

これに対し、原告側から、1)について同意し、2)についても主張を明確にすることが説明された。

次回裁判は12月13日(金)、10時30分、905号ラウンドテーブル。


ページのトップへ
ホームに戻る