村井巡査部長本人調書
事件当日の未明、最初に現場に駆けつけたパトカー巡査2名のうち、村井巡査部長による証言反訳書の全文。証言のポイントは次の通り。
- ビールか日本酒か分からないが、酒を飲んで間もないような新鮮な臭いがした。
- 久保氏を起こし、ビニールを膨らませ、アルコール検知器で検査をすることはしなかった。
- 酒に酔って寝ているだけなので、短時間で目を覚まし、タイヤがパンクしているので(車を捨て、徒歩で)帰宅すると思った。
- 走行中を見ていないので、酒酔い運転としての立件はできないと考えた。
- 久保氏の血液からアルコールは検出されていないとのことだが、自分には分からない。
- 身体に目立った損傷がなく、頭部に負傷もないので、フロントガラスへの頭部追突の可能性は考えなかった。
- 対光反射で瞳孔が収縮したので、脳内出血の可能性は考えなかった。
- フロントガラスのひび割れの大きさは、こぶし大だった。当日にできたものとは判断しなかった。
- 「車の損傷状況からみて、運転手に強い衝撃が加わったとは全然考えなかったのか」という裁判官の問いに対し「思わなかった」と証言。
- 久保氏は意識不明の状態ではなく、寝ているだけと判断したので、救急車を呼ぶなどの保護をしなかった自分の措置に間違いはなく適切だった。
- 免許証は探したが発見されなかった。
- 車のナンバーから所有者を割り出したが、久保氏の状態については報告せず、久保家とは連絡をとっていない。
- 自分が受けた懲戒の理由は、詳しく状況を上司に報告しなかったことであり、久保氏の扱いが不適正だったことは、その中に入っていない。
平成14年10月25日
宣誓
良心に従って真実を述べ
何事も隠さず、
偽りを述べないことを
誓います。
氏名 村井 学
被告神奈川県代理人(金子泰輔)
乙A第2号証を示す
- これは,あなたが作成したものですね。
- はい,そうです。
- あなたの勤務経歴や現在の勤務先は,この陳述書に書いてあるとおりですか。
- はい,現在も保土ヶ谷警察署地域第2課で勤務しております。
- 勤続年数はどれくらいになりますか。
- 現在までで19年になります。
- 警察官として,今まで主にどのような仕事をしてきましたか。
- 地域警察官です。
- 地域警察官の任務は,一般的に言うと何ですか。
- 地域管内の実態に則し,すべての警察事象に対応し,地域住民の生活の安全,平穏を確保することを任務としています。
- あなたは,平成9年7月19日の深夜,パトカー乗務員としての勤務中に,原告久保佐紀子さんのご主人である久保幹郎さんが乗っていたジープに関する事案を取り扱いましたか。
- はい,取り扱いました。
- どのような取扱をしましたか。
- 三ッ沢上町交差点の車線上にジープが止まっていまして,その車内に久保さんが寝ていたのを発見し,ジープを安全な場所まで移動させました。
- 取り扱った当時,あなたはどのような職務を担当していたのでしょうか。
- 保土ヶ谷警察署地域第2課でパトカー2号の乗務員でした。
- パトカー勤務というのは,一般的にどのような活動を行うのですか。
- パトカーに乗務し機動警らを行い,犯罪の予防検挙活動,その他管内で発生する事件事故の初動的な措置を取り扱います。
- どういういきさつで,あなたがこの事案を取り扱うことになったのですか。
- 110番通報があり,本署幹部から無線指令を受けました。
- 110番通報は,パトカーの警察官にはどのような形で指令されるのですか。
- 警察本部の通信指令課から管轄する警察署へ無線または有線で指令があり,それを受けた本署幹部がパトカーや交番に指令してきます。
- 110番通報は,一番最初は本部通信指令課に入って,そこから今おっしゃった順番で指令が行くということですね。
- はい。
- 本署幹部という言葉が出てきたんですが,これは具体的にはどういう方を指すのでしょうか。
- 保土ヶ谷警察署に勤務する私たち地域警察官を指揮命令する,私の上司に当たる者です。
- 当時,本署幹部の方からの指令は,どういう内容だったのでしょうか。
- 駐車苦情事案の110番通報,三ッ沢上町交差点内にジープが止まっているので現場に向かえという指令内容でした。
- そういう指令が署活系無線機で入ったということでよろしいですか。
- はい,署活系無線機で指令がありました。
- 署活系無線機というのは,署内の通信手段であって,署とパトカーとの間の連絡を行うものですね。
- はい,そうです。
- 今おっしゃった指令を受けたときは,あなたはどこで何をしていましたか。
- 保土ヶ谷区岩間町付近を相勤者の青地巡査とパトカーで警らをしていました。
- 指令を受けたときに,あなたの認識ではどのような事案だと思いましたか。
- 駐車苦情の110番通報でしたので,三ッ沢上町交差点内にジープが相当迷惑な形で駐車しているのではないかと思いました。
- 駐車苦情事案の場合,通常どういう取扱をするのですか。
- 車両の所有者を調査し,車両を移動させるか,または駐車違反として切符を告知したり,レッカー車によって車両を移動させることもあります。
- この指令を受けたときに,あなたは急いで向かったほうがいいと思いましたか。
- 110番通報でしたので,早く行こうと思いました。
- その指令を受けたときの場所と,駐車苦情の現場はどのくらい離れていたのですか。
- 車で10分程度の距離でした。
- 現場までは,どのような経路で行きましたか。
- 環状1号線を直進して,浅間下の交差点を左折して三ッ沢上町交差点に向かいました。
- その現場までの経路は,だれが決めたのですか。
- 私が決めました。
- その経路は最短経路になるのですか。
- はい,そうです。
- そこに向かうまでの間,パトカーのサイレンを鳴らしたり,赤色灯をつけたりはしましたか。
- いいえ,していません。
- それほど緊急性は認められなかったということになりますか。
- はい,そうです。
- あなたがジープを初めに発見したのはどの地点ですか。
- 三ッ沢公園方向から三ッ沢上町交差点で信号停止して,そのときに国道1号線を挟んで反対側の車線上にジープが止まっているのを発見しました。
- 甲第5号証の写真@を示す
この写真は,撮影が昼間で時刻の点では当時と違うのは当然分かっておりますけれども,そのことを別にして,ジープが止まっていた現場の付近の写真ということがあなたに分かりますか。
- はい,分かります。
- 写真に写っている状況を確認しますが,時刻の点は別にして,車線がいろいろ分けられているとか,その他現場の状況はこの写真で当時の状況と変わりはありませんか。
- はい,変わりありません。
- 当時,ジープはどこに止まっていましたか。
- 岡沢町方向に進む右折車線上の停止線より手前に止まっていました。
- この写真で言うと,向かっで左方向が岡沢町方向になるのですね。
- そうです。
- ジープが止まっていた車線は右折車線とおっしゃったのだけれども,写真上,右折車線は2つ写っていますね。
- はい。
- このどちらの車線上に止まっていたのですか。
- 向かって左側の車線です。
- 写真で言う向かって左だから,道路で言うと中央線寄りということですか。
- はい,そうです。
- その右折する車線上に止まっていたということですね。
- はい,そうです。
- ジープを発見したとき,通報のあったジープだとすぐに思いましたか。
- はい,すぐ分かりました。
- どうして分かったのでしょうか。
- 周囲を見渡したところ,通報内容と一致するような車はほかには見当たりませんでしたので,すぐに分かりました。
- この.ジープを発見してから,ジープにはどのようにして近付きましたか。
- ジープを発見したときには,既にパトカーは右折車線に信号で停止していましたので,そのまま直進するわけにもいかなかったので,いったん左折した後にUターンして,三ッ沢上町交差点をまた左折してジープの真横を通り過ぎてから,Uターンしてジープの後方にパトカーを止めました。
- 今,あなたはパトカーが右折車線にいたとおっしゃったけれど,左折されたのだから左折車線でしょう。
- はい,間違えました。
- それで,今おっしゃった方法で,結果としてはジープの後方にパトカーを止めたのですね。
- はい,そうです。
- そのとき,ジープはどのような状態で止まっていましたか。
- ほろ付きのジープで,右折車線の停止線より10メーターぐらい手前にハザードランプを点滅させた状態で止まっていました。
- そのとき,このジープ付近の一般車両はどのくらい通行していましたか。
- 昼間ほどは多くありませんでした。ジープの隣の右折車線では,赤信号で四,五台が停車するくらいの状況でした。
- パトカーを止めた後,あなたと一緒にいた青地さんは何をしましたか。
- 私はパトカーの車内に残り,パトカーの拡声器で運転手を呼び戻すために広報を行い,青地巡査はパトカーを降りてジープの確認に向かいました。
- あなた自身は,どうして広報をしようとしたのですか。
- ジープの横を通ったときに,人が乗っていないように見えたので,呼び戻すために広報を行いました。
- この時点でのあなたの認識は,車には人がいないという認識だったわけですね。
- はい。
- あなたの認識では,このとき運転手は何をしているんだと思っていましたか。
- 車の故障か何かで,電話を掛けに行っているのではないかと思いました。
- 青地さんがジープを確認しに行ったというお話ですが,その結果はどうでしたか。
- ジープの車内に人が寝ているということを報告してきました。
- 寝ているということを聞いて,あなたはそれから何をしましたか。
- 私はパトカーを降りて,トランクから矢印誘導板をパトカーの後方に設置して,青地巡査と共にジープの確認に向かいました。
- また,青地さんとあなたと2人でジープのほうに行ったということですね。
- はい,そうです。
- ジープへは,どのように近付いていきましたか。
- パトカーの後方から,パトカーの運転席の横を青地巡査と共に2人でジープの運転席側に直接向かいました。
- それでジープの車内の様子を見たわけですか。
- はい,そうです。
- ジープの車内は,どのような状況でしたか。
- 40歳から50歳ぐらいの男性が,頭部を助手席のシートの上に,両足を運転席のシートの上にそろえて,足を上に曲げるような状態で仰向けに寝ていました。
- 足を上に曲げるような形というのは。
- ひざをくの字というか。
- くの字かへの字か分からないけれど,上に立てる形ですね。
- はい,そうです。
- 両膝をそろえて上に立てていたのですか。
- はい,そうです。
- つまり,両足とも運転席のシートの上にのっている形なのですね。
- はい,そうです。
- あなたは,それを寝ていると思ったのですか。
- はい,寝ていると思いました。
- どうして寝ていると思ったのですか。
- 運転席の座席の下に靴がそろえて置かれていましたし、車内から酒のようなにおいもしており,普通に呼吸して寝ていましたので,寝ているように思いました。
- 逆に,特別異常な点もあなたとしては見られなかったということですね。
- 着衣の乱れとか,けがとかもありませんでしたので,普通に呼吸して寝ているようにしか見えませんでした。
- 車内に吐潟物はありましたか。
- いいえ,ありませんでした。
- 男性の顔色はどうでしたか。
- 普通でした。
- このとき,車内は暗くはなかったですか。
- 街灯の光りも入っていましたので,車内を確認するには支障はありませんでした。
- 寝込んでいるその男性に対して,何かしましたか。
- 青地巡査が,男性のひざの辺りを揺すって「起きて起きて。」と声を掛けていました。
- 複数回声を掛けたのですね。
- はい,そうです。
- 男性の反応はどうでしたか。
- 私は横で見ていましたが,男性は寝ていて起きませんでした。
- それからどうしましたか。
- 青地巡査は,そのまま繰り返し声を掛けていたので,私はジープの外見の確認を行いました。
- ジープの外見はどんな状態だったでしょうか。
- ジープの外見は,左前輪がパンクして,前方のフェンダーが左右ともへこんでいました。
- そのようなジープの外見を見て,あなたはどのように思いましたか。
- 事故を起こした車だと思ったので,周辺を確認しました。
- ジープの周辺を確認した結果,周辺はどうでしたか。
- 事故の関係者等も見当たりませんでしたし,周辺の道路やガードレールには事故の痕跡等も見当たりませんでした。
- 関係者というのは,人間も見当たらないし,車両みたいなものもなかったということですか。
- はい,そうです。
- そのジープはその場に止まっていたわけですが,それをその後どうしましたか。
- 他の車の妨害になると思ったので,私が運転して近くにあるホンダクリオの前に移動しました。
- あなたが運転したわけですから,ジープに乗り込むわけでしょうけれども,ジープにはどのようにして乗り込んだのでしょうか。
- 運転席の下にあった靴を座席の下に移動させまして、男性の両足を私の左肩の後ろに来るような形で乗り込みまして移動させました。
- そのときに,あなたは改めてその場にあった靴は見ているわけですね。
- はい,見ています。
- そのときの靴の状態をもう一回言っていただけますか。
- 座席の下に両靴がそろえてあるような状態で、片手でこういう感じで移動できるような感じでした。
- 片手で両方の靴を持って移動できたということですね。
- はい,そうです。
- その靴には,汚れとか何か異常な様子はありましたか。
- いいえ,ありませんでした。
- その辺は,はっきりと見て覚えていらっしゃるわけですね。
- はい,覚えています。
- そのように乗り込まれて,ジープをどのように移動させましたか。
- 私が運手して移動させましたが,そのとき,青地巡査がパトカーでジープの前方を,神奈川署員の方がジープの後方を交通整理しながら移動しました。
- ジープの移動中の状況ですが,あなたは何か気が付いたことがありますか。
- ジープのフロントガラスの上のほうに,こぶしぐらいの大きさのひび割れがあることに気が付きました。
-
甲第6号証の写真E及びFを示す
この写真は,ジープのフロントガラスがひび割れている状況をこの裁判の原告が後日写真撮影されたもののようなんですけれども,写真に写っているひび割れの状況を見て,あなたはどう思いますか。
- 私が気付いたときには,これほど大きくなっていませんで,こぶしぐらいの大きさでしたから,さほどは気にしていませんでした。
- ジープを移動した後の状況ですが,まず何をしましたか。
- 私がジープから降りると,青地巡査が運転席側から乗り込んで助手席のドアロックを外して,助手席のドアを開けて今度は肩を揺すって男性を起こそうとして呼び掛けていました。
- 青地さんは,中から助手席のロックを外していったん外からぐるっと助手席側に回ったということですか。
- はい,そうです。
- 青地さんは,男性を起こそうとしていたわけですね。
- はい。
- そのとき,男性はどのような反応をしましたか。
- 男性は,わずかに顔を動かすようなしぐさをしたり,右腕を上に上げたりしていました。
- そういう男性の反応を見て,あなたはどう思いましたか。
- 酔って寝ていると思いました。
- 病気や事故の影響とは思いませんでしたか。
- 車内から酒のようなにおいもしていましたし,靴をそろえて普通に寝ているような状況でしたし,けがもありませんでしたから,事故や病気のことは考えませんでした。
- そういった状態で,寝たまま起きないこの男性に対して,その後,何をしましたか。
- 対光反射の検査を行いました。
- どうして対光反射検査を実施したのでしょうか。
- 普通に呼吸して寝ているように見えましたが,念のために,脳内出血であるかないかのために検査を行いました。
- 具体的には,どのようにして検査をしましたか。
- 青地巡査が男性の右目のまぶたを開けて,懐中電灯の光りを照らしました。
- その検査の最中,男性は何か反応したでしょうか。
- まぶしそうに首を左右に動かしたり,光りを遮ろうとして右腕を動かしたりしていました。
- 首を左右に動かすというのは,光りをまぶしそうに背けようとするように見受けられたわけですね。
- そうです。
- そういう検査をした結果,何が分かったのですか。
- 瞳孔がすぐに収縮しましたので,脳内出血ではないと分かりました。
- この男性は,この交差点の場所にジープを止めて寝ていたのはなぜなんだろうと考えられましたか。
- どこか違う場所で自過失事故を起こして交差点まで走ってきましたが,信号停止している間に酒や疲労から睡魔に襲われて寝込んでしまったものと思いました。
- 自過失事故という事故については,どのような事故だとあなたは思ったのですか。
- ガードレールか何かに接触したような事故だと思いました。
- 対光反射検査の後は,何をしましたか。
- 男性の身元を確認しようと思いまして,車内から免許証を探そうとしました。
- 結果として見つかりましたか。
- 見つかりませんでした。
- 身元を確認するために,どのようなことをしましたか。
- 車両の所有者を青地巡査に照会するように依頼しました。
- これは,保土ヶ谷本署にナンバー照会をするのですね。
- はい,そうです。
- ナンバー照会の結果は,どうでしたか。
- 車両の所有者が久保幹郎さんだということが分かりました。
- その後,どうしましたか。
もう大丈夫だと思ったので,本部の通信指令課に措置結果を報告して,通常の警らに移行しました。
- もう大丈夫だと思ったということですけれども,具体的にどういうことですか。
- 男性は,比較的軽い酒のにおいでしたので,比較的短時間のうちに目を覚まして,目を覚ませば自分で行動できると思ったからです。
- この深夜の勤務については,勤務交代は何時にしましたか。
- 朝の10時ごろでした。
- 勤務交代の際,今取り扱われてお話しいただいた事案については引継をしましたか。
- いいえ,していません。
- なぜ,引継をしなかったのでしょうか。
- 現場で措置は終了していましたし,継続して措置が必要な事案だとも思わなかったからです。
- 陳述書に書いていらっしゃいますけれども,その後,あなたは地域課長から久保さんが亡くなったことを聞いたわけですね。
- はい,そうです。
- そのことを聞いてどう思いましたか。
- 驚きました。
- なぜ驚いたのですか。
- 私が取り扱った際には,普通に呼吸して寝ているようにしか見えませんでしたので,まさか亡くなるとは思いませんでしたので驚きました。
- 今ずっと聞いていて改めて確認しますけれども,あなたとしては酔って寝ているんだと判断したのはなぜでしょうか。
- 酒のにおいも特に強くありませんでしたし,男性は普通に呼吸して寝ているような状態でした。男性の肩を揺すって起こそうとしたときには,首や腕を動かしたり,対光反射の検査でも瞳孔が収縮して,そのときもまぶしそうに光りを遮るようなしぐさもしていましたし,けがもありませんでしたので,酔って寝ているようにしか思いませんでした。
- 保護措置が必要ないと思った理由はどういうことでしょうか。
- 酒のにおいから,泥酔者とは認めませんでしたし,男性は酒や疲労から睡魔に襲われてしまって,その場で寝込んだような状態でした。対光反射の検査においても瞳孔が収縮していますし,着衣に乱れもなく,普通に寝ているような状態でしたので,保護措置が必要なものとは思えなかったからです。
原告ら代理人(中西一裕)
- 先ほどのお話では,事件当日9年7月19日の午前0時19分ごろに無線連絡を受けて,その中身は駐車苦情事案の110番通報だったということですか。
- はい,そうです。
- それ以上の細かい内容はなかたわけですか。
- 三ッ沢上町の交差点にジープが駐車しているという駐車苦情事案の通報ということが,無線で指令を受けて分かりました。
- あなたは,迷惑な形で駐車しているんじゃないかと思って現場に行ったと。
- はい,そうです。
- 現場に来てみたら,先ほどおっしゃったような状況で交差点の中にジープが止まっていたわけですね。
- はい。
- 止まっているジープを見て,まず初めにあなたはどう思いましたか。
- 止まっているジープを最初に見たのは,国道1号線を挟んでまだ手前の状態でしたから,そのときはまだ特には・・・。
- ジープに近寄って,交差点の中に止まっている,ハザードランプがついている,エンジンが掛けっぱなしになっているというのを見て,まず何を思いましたか。
- 車の故障か何かで∴運転手が電話か何かをしに行っているように見えました。
- まず普通の状態でないことは分かったよね。
- ハザードランプをつけて,普通は止まらないところに1台だけぽつりと止まっていましたから。
- 止まっている場所も交差点の中だから,普通じゃないですよね。
- 普通ではありませんけど,故障か何か,そういうような。
- 故障か何かとおっしゃったけれど,故障以外の可能性もありますよね。
- そのとき,私は故障ではないかというふうに自分では思いました。
- 警察官としては,いろんな可能性を考えなくてはいけないでしょう。
- 可能性を考えるとかいう前に,広報をしたりとか,そういうことを考えましたので,その場で考え込むようなことはしませんでした。
- まず第一見して,これは故障だと思って広報しようと思ったわけですか。
- はい。
- 可能性としては,事故で動けなくなっている,あるいは人が中で病気か何かで動けなくなっている可能性だってあったよね。
- そのときは,私はそういうふうには思いませんでした。
- それはなぜですか。
- 先ほども話しましたように,人は中にいないように見えたので,故障か何かで故障に対する手配のために電話か何かを掛けに行っているのではないかというふうに思ったので。
- 人が中にいないように見えたから故障だと思ったということですか。
- そうです。
- 拡声器を使って運転者を呼んだということですか。
- はい。
- 時間は真夜中ですね。
- そうです。
- 真夜中で拡声器で何度も呼んだわけですか。
- 呼びました。
- この辺りは住宅も結構あると思うんだけれど,本当にそんなことをしたのですか。
- しています。間違いありません。
- 本件で110番通報をされた平岩さん(仮称)という方が現場を一部始終見ていたのですけれど,現場で拡声器で呼んだというのは記憶にないと言っているのだけれど。
- 私は間違いなく拡声器を使って,「運転手さん,車に戻ってください。」と3回か4回は広報しています。それは聞達いないです。
- 真夜中で拡声器を使ったら相当目立つはずだけれど,この人は記憶していないんですが,本当に呼んだのですか。
- 間違いなく呼んでいます。
幾判長
- どういう運転手さんという呼び方ですか。
- 「ジープの運転手さんは,大至急車に戻ってください。」と。もし近くにいて聞こえるようであれば,3回か4回呼べば戻ってきますから,一瞬近所の迷惑にはなりますけれども,それでそれが終われば,ずっと長い間呼んでいるわけではありませんから。
- いずれにしても,ジープの運転手さんは車へ戻ってくださいという呼び掛けを3回ほどしたということですか。
- はい,そうです。
原告ら代理人(中西一裕)
- 駐車苦情事案だと思って現場に来ているから,故障車だと思ったからさっさと片付けようとしたのではないんですか。
- いいえ,そういうことはありません。
- 次に青地巡査がそばに寄って,中に人がいることを見たわけですね。
- はい。
- 青地巡査は,あなたのところに戻ってきて「中に人が寝ているよ。」と言ったのですか。
- そうです。
- 「寝ている」という言葉を使いましたか。
- 「中に人が寝ているよ。」と言ってきました。
- それからあなたも車のそばに寄って,車の外から中を見ましたね。
- 見ました。
- 人は中にいたわけですね。
- いました。
- あなたもそれで寝ていると思ったのですか。
- 思いました。
- そのとき,あなたは車の外から見ているだけですよね。
- いいえ,もう私と青地さんが車に行ったときは,運転席側のドアを開けて車内を見ています。
- ドアを開けたかどうかは別として,近寄ってまず一見しただけでしょう。
- そうです。
- それで寝ていると思ったんですか。
- まず寝ていると思いました。
- 車の中で人が横になっているというのが客観的な状況でしょう。
- 靴もそろえて置かれていましたし。
- それは,もっと中を調べた後でしょう。
- ドアを開けたときに、私はもうその時点で見えましたし、ハザードランプをつけたり、前照灯も消えていましたので,自分でそれなりの措置をとっていますから,自分の意思で寝てしまったんだと思いました。
- 寝ていると思った後,近寄って見たんじゃないんですか,それともよく見たのですか。
- 開けたときには,先ほど話したように助手席側に頭を,運転席のシートの上に両足をのせて上に曲げた状態で仰向けになっていたのは確認しました。
- ジープの車内というのは,相当狭い車内ではなかったですか。
- はい。
- 座席もタクシーのようにベンチシートではなくて,助手席と運転席が分かれていますよね。
- はい。
- そういう状況で,頭を助手席にやって足を運転席にやって寝ていたというわけですか。
- そうです。
- 靴を脱いでですか。
- 間違いありません。
- ちょっと不自然な姿勢じゃないですか。
- 逆に,靴を脱いだり前照灯を消したりとか,そういうことを自分の判断でして,そのまま仰向けに寝てしまったんだというふうに見えました。
- これは交差点の中ですよ。
- はい。
- あなたは,交差点の中でわざわざ靴を脱いでそういう姿勢になって人か寝ていると思ったのですか。
- 私の経験則で,そういう人も何人か扱ったことがありますので。
- どういう人ですか。
- 交差点で信号待ちをしている間に寝てしまったり,そういう事案を扱ったことがありますので。
- いつごろですか。
- 何年かに一遍ぐらいとかありますし。
- 何件ぐらい扱ったのですか。
- 二,三件は扱っていると思いますけど,そのほかにも無線とか聞いていまして,そういうような似たような事案はたまに聞くことがありますから。
- 交差点の中でうっかり寝入ってしまうという場合に,わざわざハザードランプをつけたり靴を脱いで横になったりするのですか。
- そのときは,その男性が自分でライトを消したりハザードランプを点灯させて・・・。
- おかしいでしょう。つい寝入ってしまう場合にハザードランプをつけたり靴を脱いで横になったりしないでしょう。そんなに余力があるのなら,車をいったん安全なところに寄せてから寝るんじゃないですか。
- 要は酒とか疲労から,そういうような睡魔に襲われてしまって寝てしまったんだと思いました。
- 寝るんだったら,がくっと寝ちゃうわけであって,一々そういう作業をしないでしょう。
- ・・・・・。
- 靴を脱いだとか横たわっていたというのは,本当のことなんですか。
- 間違いないです。本当です。
- 自分で話していておかしいと思わないですか。
- いいえ,本当のことですから。
- この車は左前輪がパンクしていたそうですね。
- はい。
- 左側の前のほうが少し沈んでいたんじゃないですか。
- パンクを確認したときには,ジープのタイヤは普通の車より大きいですから,パンクすれば空気が抜けて若干沈んでいる状態は分かりました。
- 左前輪というと助手席の側ですよね。
- そうです。
- 助手席の側が沈んでいるということは,車の中でも助手席の側に下がって傾いている状況でしょう。分かりますか。
- 分かります。
- そういう状況で,助手席の低いほうに頭をやって寝るということが考えられるんですか。
- それほど極端に下がっているわけじゃないですから。実際に寝ていましたし。これはちょっと私も・・・。
- 傾いている方向に倒れていたんじゃないんですか。
- いいえ,倒れていませんでした。
- 酒のような弱いにおいがしたと言っていますよね。
- はい。
- 酒のような弱いにおいというのは,非常にあいまいな言い方なんだけれど,あなた自身がにおいを喚いだのですか。
- 車のドアを開けたときに,酒のようなにおいがしました。
- 車のドアを開けたとき以外ににおいはしましたか。
- いや,開けたときから継続してです。
- 継続してというのは,処理している間中ずっとということですか。
- はい,そうです。
- ような弱いにおいというのは,酒のにおいとは断定できなかったわけですか。
- ようなという・・・。
裁判長
さっきの質問の中では,後のほうの総括のところでは,酒のにおいがしたからということも言っているから,もう一度そこを確認したらどうですか。
原告ら代理人(中西一裕)
- 酒のにおいというふうに,あなたは断定できたのですか。
- ビールとか日本酒とかそこまで分かりませんけど,酒を飲んで間もないような,新鮮なにおいがしたことは間違いないです。
- あなたは,そのにおいを確認するために,久保さんの口の元に鼻をつけて呼気を嗅いだりしましたか。
- いいえ,そこまではしていません。
- なぜですか。
- ドアを開けたときに,一見して酒のにおいがしていましたので,そこまではしていませんけど,特に瞳孔の検査とかしているときも・・・。
- 一応確認のためにそれぐらいするんじゃないんですか。
- そのときはしませんでした。
- ぷんぷんした強いにおいというのではないのでしょう。
- 違います。
- 弱いにおいなんでしょう。
- そうです。
- 本当に久保さんが出しているのかどうか,そばに寄って確認したりするんじゃないんですか。
- そのときは,まず起こして移動させることのほうが先決だと思いましたので,そこまでは確認していません。
- その後はどうなんですか。この前後の過程の中で,本当に酒を飲んでいるのかどうか,近寄って呼気を確認したりしたことはあるんですか。
- いいえ,ありません。
- パトカーには,アルコール検知管とか,アルコールメーターというのがあるはずですね。
- はい。
- それは使って確認しましたか。
- いいえ,していません。
- なぜですか。
- パトカーのアルコール検査器は,相手がビニールを膨らまさないと検査できませんのでしていません。
- アルコールメーターはどうですか。
- アルコールメーターはありません。
- 相手を起こして膨らまさせることはできないと思ったのですか。
- そこまでの措置は必要ないと思いました。
- これは,あなたたちの目から見れば酔っ払い運転に当たるわけでしょう。
- 可能性はありますけど,実際に男性が車を運転しているところは,私も見ている人もだれもいませんから,それを事件として立証することは難しいと思ったので,寝ている人を無理やり起こしてまで検査をしようとか,そこまでは思いませんでした。
- 聞くところによると,風船を膨らませなくてもそばに寄って呼気を採取するだけでアルコール検査はできると聞いたんだけれど,そうではないんですか。
- パトカーには,そういう検査をする機械は積んでおりません。
- アルコールの酒のにおいがするというのは,検知管もないならば,なおさらしっかり本人の呼気を喚いで確認する必要があったんじゃないんですか。
- そのときは,男性を起こしたり車を安全な場所に移動することのほうが先決だと思いましたので,そういうことはしていません。
- 酔っ払って寝ているというふうに,もう一瞬思っちゃって,そのままそれで先入観を持って処理したんじゃないんですか。
- いいえ,違います。
- 実際にこの後,本人からはアルコールは検査されていないんですよ。それは知っていますか。
- はい,聞いています。
- どう思いますか。
- それは私には分かりません。
- あなたの今の証言とは矛盾しているんじゃないですか。
- 私が扱っていたときには,お酒のようなにおいがしていましたので,そういうように感じました。
- そんなにぷんぷんとはいかなくても,ずっとにおいがしているような状況だったら,後で検査で出るでしょう。
- そちらのことは,ちょっと私は分かりません。
- 本当は,においなんてしなかったんじゃないんですか。
- いいえ,していました。
- ジープの外見を確認していますよね。
- はい。
- さっきのタイヤのパンクしていることと,左右のフェンダーが破損しているというか,でこぼこになっているのは見たわけですね。
- はい。
- 運転席側のフェンダーミラーは確認しましたか。
- ちょっと記憶にはありません。
- 実際には割れてガラスが全部落ちていたんだけれど,見ていないですか。
- それはちょっと記憶にないです。
- あなたは,車に乗って実際に運転して移動させたわけですよね。
- はい。
- そのときには,フェンダーミラーだから,後ろを確認する際に見るはずじゃないんですか。
- ちょっとそこのところは記憶にありません。
- それは見ていなかったとしても,事故車であるとは当時認識したわけですよね。
- はい。
- 事故車であって,中で人が横になっているというふうな状況だと,ここでは分かったわけでしょう。
- はい。
- それでもまだ,酔っ払って寝ているという認識を変える必要はないと思ったんですか。
- 事故を起こしたことは分かりましたけど,まず現場では事故の痕跡がなかったので,どこかほかの場所で事故を起こしたと思いました。相手がいる事故でしたら,相手のほうから通報が入ると思いましたから,自過失事故だと認識しておりましたし,ガードレールか何かにぶつかったような事故だと認識していました。
- 自過失事故であっても相手のある事故であっても,事故であると分かった以上は,乗っている人がけがをしている可能性は当然ありますよね。
- あります。
- それは考えなかったのですか。
- 考えたので,顔とか見える範囲とかではけがもありませんでしたし,そういうことは確認しています。
- けががなくても,内出血とか内臓とか,あなたの言っている脳内出血という可能性はあるわけでしょう。
- 普通に呼吸して寝ていましたし,あとは起こそうとしたときも払いのけるようなしぐさをしていますし。
- 可能性は一応考えたのでしょう。
- けがの可能性は考えたので。
- 考えたのですね。
- そうです。
- それは車を移動する前ですよね。
- ・・・・・・・・。
- 車を移動する前に,パンクとかフェンダーのでこぼこは確認しているでしょう。
- しています。
- そのときに,事故でけがをしていることも可能性としては考えたわけでしょう。
- そのときは,ほかの車も通ってきたので,まず移動させることを考えましたから,その後,ホンダクリオの前のほとんど車が通らない場所に移動した後に細かく見ていますから。
- 事故車であると分かったのは,その前じゃないですか。
- はい,そうです。
- その時点では,乗っている久保さんがけがをしているかもしれないとは思わなかったのですか。
- 見える範囲で、特に傷とか出血とかはありませんでしたから。
- 全く思わなかったのですか。
- 思いませんでした。
- 車を移動したとき,あなたが運転したわけですよね。
- はい,そうです。
- そのとき,久保さんの姿勢をどういうふうにしたのですか。
- まず,靴がペダルのちょっと下のところにあったので,靴が邪魔になるのでどけました。
- 久保さん本人の体はどういうふうにしたのですか。
- 両足をこっちのところに上げて,座席と私の背中ではさむような感じで。
- 立て膝ではなくて,足全体を上げちゃったということですか。
- そうです。
- あなたが運転席側に乗り込んだと。
- はい。
- そのときに,久保さんの足は運転席のほうに立て膝になっていたということなんでしょう。
- はい。
- その立て膝になっている足を,あなたの肩に担ぐようにしたということですか。
- ・・・・・・。
裁判長
- 左肩越しに後ろの座席のほうに足を移動させたということですか。
- はい,そうです。
原告ら代理人(中西一裕)
- 久保さんの頭のほうはそのままですか。
- そうです。
- 助手席のほうに頭をやって寝ているのですか。
- はい。
- 足を上に上げて,逆立ちとは言わないけれども,頭が下がっているという状況ですね。
- そうです。
- もし,本人がけがをしているのなら,こんなふうな姿勢でいわば乱暴な扱いだと思うんだけれど,よくないとは思わなかったのですか。
- 乱暴というほどのことはしていませんし,普通に・・・。
- 足をぼんと担ぎ上げて後ろにやったというんでしょう。
- はい。
- 頭は下でしょう。
- はい。
- 後で脳内出血と出てくるけれど,脳内出血だったらそんな姿勢はとれないじゃないですか。
- そのとき,けがもしていないのは分かりました・・・。
- そのときは,そういうことは考えなかったというわけですね。
- 考えていないと思います。
- 自分でも,そこまで考えなかったのは、うかつだと思わないですか。
- いいえ,その場の状況では特に。
- 先ほど,フロントガラスのひび割れについて話されていましたけど,この裁判で出されている写真のフロンのガラスの傷は,あなたが見たものよりもずっと大きくなっているというわけですか。
- はい。
- どういう意味でそうおっしゃっているんですか。
- 私が見た当時は,こぶしぐらいの大きさでしたので。
- この事件の後で,こちらが証拠をより傷を拡大して証拠にしているという意味ですか。
- いいえ,違います。それは分かりません。
- そういう意味になっちゃうでしょう。
- ガラスですから。
裁判長
- こぶしの大きさぐらいに見えたという趣旨ですけれども,この写真で見る限りでは、こぶし大みたいな大きさの中心部分から放射状に線が走っているように見えますが,そういう状態は見ていないという趣旨なんですか。
- いいえ,放射状までは見ていませんから。故意に大きくしたとか,そういうことは考えていませんけど。
原告ら代理人(中西一裕)
- 当時,見ていないということですか,それとも違うという意味ですか。
- ・・・・・・。
- 甲第6号証の写真E及びFを示す
あなたのおっしゃっているのは,こういう状況ではなかったという,違うという趣旨でおっしゃっているのですか。
- そうです。私が見たときには,こぶしぐらいの大きさのひび割れしかありませんでしたので。
- この写真で言うと,クモの巣状の中心点にこぶし状の。
- そうです。
- こぶし状ということは,このガラスで言うと半分ぐらいですか。
- 一番中心から大体こぶしぐらいの大きさでしたので。
- 端っこまでひびが入っていなかったということですか。
- はい,そうです。
裁判長
- 放射状に割れているという状況は現認していないということですね。
- 現認していません。
原告ら代理人(中西一裕)
この車は事故後は一切,警察にいったん引き揚げられていて原告のほうに返されて何も使っていないんですよ。あなたが見た後で,だれかが手を加えて大きくしたという意味になっちゃうでしょう。
被告神奈川県代理人(金子泰輔)
異議です。それは違う,誤導だと思います。自然に大きくなる可能性もありますので,今の質問は誤導です。
原告ら代理人(中西一裕)
- 自然に大きくなる可能性があるんですか。
- ガラスですから。
裁判長
証人はそういう形しか現認していないと言うのだから,それはそれでよろしいじゃないですか。基本的に質問は事実を確認する形で進めてください。
原告ら代理人(中西一裕)
- 警察では,この車をいったん引き揚げていますよね。
- はい。
- そのときに,人が中で死んでいたわけだから写真を撮っているんじゃないですか。
- それは,私はそういう捜査には携わっていませんので分かりません。
- 普通なら撮るんじゃないですかね。
- 私は分かりません。
- 撮っているのなら,重要な証拠なんだから裁判で違うなら違うで証拠で出せるでしょう。違いますか。
- それは私は分からないです。
- こぶし大の傷は,当日できたものとは判断できないと陳述書に書いていますね。
- はい。
- 逆に言えば,当日できたものでないと判断する根拠はありますか。
- 頭とかがガラスにぶつかれば,それなりに頭にも顕著なこぶとか傷ができると思いますので,そのときそういうものはありませんでしたから,直接その傷がその事故にぶつかったものということは思わなかったですし,ましてやジープですからオフロードとか走る車なので,傷とかそういうのがあっても別に不思議だとは思いませんでした。
- あなたは,久保さんの状況を見た上で,当日の事故じゃないんじゃないかと推測したわけですか。聞いているのは,フロントガラスのひびです。
- はい。
- 久保さんの状況に合わせてそう考えたというわけですか。
- ええ,久保さんの額とかを見れば,ガラスが割れるほどの衝撃でしたら,こぶとかそういうのができると思いますから,そういうのはなかったんで,それとは結びつかないと思いました。
裁判長
- 頭部の外傷の有無について,どのような検査をしたのか確認したのか,具体的に説明してください。
- 頭部の外傷については,対光反射の検査とかでも顔を近くに近付けていますから,顔ははっきり見えますので。
- 顔だけ見たということですね。髪の毛の中は調べてみましたか。
- それはちょっと記憶していません。
- 意識的には行っていないのですか。
- ・・・・・・。
- 主に顔面を中心に,外見的な判断として頭部の外傷がないという判断をしたということになりますか。
- 頭部のほうの確認をしたかどうかまでは,ちょっと今の記憶ではありません。したかもしれませんけれども,記憶には残っていません。
- 結局は,顔面を中心に目で外傷の有無を確認した範囲にとどまっているわけすね。
- はい。
原告ら代理人(中西一裕)
- 頭部のけがというのは,外傷がなくても中で出血している可能性があるのはご存じですよね。
- はい。
- 可能性としては,そっちも考えなくてはならなかったはずでしょう。
- ぶつかれば,要はガラスよりも額のほうが弱いわけですから,顕著な痕跡が出ると思いましたから。
- 可能性としては,出ないケースもあるでしょう。
- ガラスが割れていることに対して,頭とかがあるんでしたら,それは出ると思いますけど。
- こぶができないケースで出血するケースは,当然考えられるんじゃないですか。
- ガラスが割れていることとは別としては,考えられます。
- それなのに,あなたはこぶがないということに合わせて,ガラスの傷は当日の事故ではないというふうに推測しちゃったというわけですね。
- 外傷がなくても・・・。
- 車を移動した後,久保さんの状況を再度確認したんですね。
- はい。
- それは本当ですか。
- 本当です。
- 酔っ払いだと思ったけれども,もう一度念のために心配だから見てみようということですか。
- 対光反射の検査とかを念のために行いました。
- 青地巡査が久保さんを揺すって起こそうとしたというわけですね。
- はい。
- 久保さんは,何か起きて話をしたんですか。
- いいえ,話はしていませんけど,肩を揺すったときに首を動かしたり,腕を動かしたりしていました。
- 最初,青地巡査が移動前にほっべたをべたべた10回ぐらいやったとさっきおっしゃいましたね。
- ひざです。
- そのときは,何も反応はなかったわけですか。
- そのときは特に反応はありませんでした。
- 意識を戻して話に応答しないという状況は,普通は意識不明の状態というんじゃないですか。
- いいえ,そのときは普通に呼吸もされていましたし,私の経験になるんですけど,よくタクシーに乗って,その後乗客の方が起きなくなっちゃって,タクシーの運転手さんが警察のほうにどうしても起きないんですけどということで連れてこられたりして,なかなか起きないような人というのは扱ったことがありますので。
- あなたの経験でそういうふうに言っているとしても,客観的に見れば,呼び掛けたり揺すったりたたいたりしても意識を戻さない人は,意識不明というんじゃないですか。
- 意識が不明ではなくて,要は光りをまぶしそうに顔を・・・。
- 目を開けて光りを直接懐中電灯を当てたりしても意識が戻らないんでしょう。
- 意識が戻らないのではなくて,顔を背けたり懐中電灯の光りがまぶしいみたいな行動はそのときにしていましたので,意識不明という状態ではありませんでした。
- 対光反射をその後したというわけですよね。
- はい。
- 一応,脳内出血は疑ったわけですね。
- 一応,普通に寝ているようには見えるんですけど,念のためにそこで収縮するかしないかということを確認して,収縮しなければ一応病人と認めようと思って。収縮したので,これは普通に寝ているだけだというふうに。
- 対光反射が決め手になるとあなたは思ったわけですか。
- 決め手というか,一応そういう起きない人は通常行いますので。
- でも,あなたは対光反射がなかったから,それでいいと思ったわけでしょう。
- 対光反射の結果で瞳孔がすぐに収縮しましたので,脳内出血ではないということが分かりました。
- あなたや青地さんは,医師の資格はないでしょう。
- ありません。
- そのような医師の資格のない人が現場で対光反射テストのようなことをやって,脳内出血かどうかを判断するということは,警察の活動としては許されているのですか。
- 警察学校のときに,そのような脳内出血の判断をするということに対して,先ほど話したように対光反射といって瞳孔に光りを当てて検査するとか,あとは足の裏にボールペンのようなものを少し力を入れて押すと,普通の人なら指が内側に曲がるのに,脳内出血の人は曲がらないとか,あとは顔が鬱血しているとか,そういうような教養を受けていますので,医師の資格はありませんけど,そういう判断の基準としては行っています。
- 現場で、脳内出血かどうかを医師の資格でもない人が判断して処理していいというわけですか。
- そのときは普通に呼吸もしていましたし,瞳孔が収縮したということは脳内出血ではないということですから。
- 脳内出血ならば,なぜ対光反射が消えるか知っていますか。
- 瞳孔が光りに対して脳が反応するから,まぶしさに対して。
- どういう反応するかは,詳しく知らないでしょう。
- 詳しくは分かりません。
- 脳内出血を起こすと,すぐに対光反射が消えるかどうかは知っていますか。
- そこまで詳しくは分かりません。
裁判長
- 一般的に,今あなたが言ったような対光反射のテスト自体,泥酔者と思っていらっしゃるか,寝込んでいらっしゃる人に対するテストというのは,警察の部内ではそのようなものをするようにという指導がいつもされていて,大体そういう形であなた方が処理する形になっているのか,なっていないのかはどうですか。
- なっています。警察学校に入ったときにまず教養を受けて,あとは通常の勤務においても幹部のほうからそういうような指導はあります。
- 神奈川県警としての一つの捜査マニュアルに従った措置だという趣旨ですね。
- はい,そうです。
原告ら代理人(中西一裕)
- 脳内出血の場合,対光反射が消失するのはかなり重大な状態になってからなんですよ。知っていましたか。
- いいえ,分かりません。
- 初期の段階では普通に対光反射は収縮するんですよ。そういうことを考えて措置するように警察では教えていないんですか。
- そこまでは教わっていませんけど,そのときには久保さんは別に苦悶の表情とかはありませんで。
- 一般の交通事故の場合で,運転者が事故を起こした相手方の運転者を救護しなければならない事故を起こした場合に,事故を起こした相手方の車両に乗っていた運転者が意識が戻らない場合は,普通はどうしろと言いますか。
- 救急車を呼ぶようにということです。
- 対光反射で確認しろという話は出てこないですよね。
- そうですね。
- 事故を疑うような状況があれば,まず救急車,まして意識が戻らない状況があれば,まず救急車というのが普通じゃないんですか。
- 先ほど話したように,意識が戻らないというような状況ではなかったんで。
- 戻ったんですか。
- 意識がないというような状況ではなくて。
- あなたたちが来てから,意識があったんですか。
被告神奈川県代理人(金子泰輔)
先ほどから,意識がないというの定義があいまいです。睡眠中のことも含めて意識不明とおっしゃっているのでしょうか。
原告ら代理人(中西一裕)
被告神奈川県代理人(金子泰輔)
そういうふうにはっきりと含めた質問をお願いします。
裁判長
いずれにしても,証人は少なくともよく眠っている状態だという前提での対応をしたということで終始しているわけで,それが適切でないというのなら,適切じゃないという形で指摘していただければいいわけであって,それ以上は議論になるからやめましょう。
原告ら代理人(中西一裕)
- この後の処置ですが,酔った状態で置いておけば,後から、目が覚めて自分で運転して帰るんじゃないかと思って置いておいたんですか。
- いいえ,目が覚めれば正気に戻って,自分の判断で自宅に連絡するなり車両の移動の措置をとると思いましたので,そのまま車に乗って帰るとは思いませんでした。
- この交差点に来るまでは,自分で運転してきたんでしょう。
- そうですね。
- そのときも酔っ払っていた可能性が高いと思ったのでしょう。
- はい。
- 目が覚めたときにも,自分で運転して帰る可能性が高いと思うのが普通じゃないんですか。
- タイヤもパンクしていましたし,酒のにおいもそれほどじゃなかったので,目が覚めれば正常な判断ができると思いました。
- 自分で運転すると思ったわけではないんですか。
- その後ですか,それは思っていません。
- そこは,そういうふうに思ったということで間違いないですか。
- はい。
- 身元の確認ですが,運転免許証が見つからなかったんですね。
- はい。
- 運転免許証はいつどこで見つかったか,あなたは知っていますか。
- 着ていなかった上着の中に入っていたということは聞いた覚えがあります。
- あなた自身が見つけたわけじゃないんですね。
- 違います。
- 聞いた話ですか。
- そうです。
- 番号から照会をして久保さんだということが分かったと。
- はい。
- その後,久保さんの自宅に連絡をしたかどうか,あなたは確認しましたか。
- していません。
- 確認しないで帰っちゃったということですか。
- そうです。
- 車の所有者は分かったけれども,それが,あなたの言い方だとそこに寝ている本人かどうかは確認しないまま帰ったわけですか。
- 特に車の盗難届けとか出ているわけではありませんから,普通,車を運転している人がその車の所有者であるということが普通なので,そこにいる人が久保さんだなということは思いました。
- そう思って帰ったのですか。
- はい。
- 自宅に連絡がとれて,この人をどうするということは確認するところまではする必要がないと判断したのですか。
- そのときは,比較的短時間のうちに目を覚ませば,自分で措置をとれると思ったので,そのときはもう大丈夫だと思ったので。
- たたいたり揺すったりしても起きないような人が短時間で目を覚ます,あるいは酔いが軽いというふうなのは矛盾していると思わないですか。
- 疲労はあって寝込んでしまっても,よく30分ぐらい寝ればすっきりして起きるような人もいますから。
- あなたたちがたたいたり揺すっても,全く起きないのにですか。
- はい。
- 目の中に光りを当てても起きない人がですか。
- そうです。30分というのは久保さんに対してではなくて,そういう人もいますから,よく車とかでもちょっと仮眠して起きればまた正気で走れるという人もいますので。
- 警察のこういう場合の処理は,酔っ払い運転の可能性が高いと。おまけに事故を起こしている可能性も高いという場合に,本人かどうかの身元を確認しないままにその場に置いて帰っちゃうということがあり得るのですか。
- 酒を飲んだのは,先ほどお話ししたとおり運転しているところを見たわけではないですから,可能性としては考えられましたけど,それを警察として立証するのは難しいと思いましたし,事故のほうも軽微な事故だと思いましたし,適う場所で自過失か何かで起こしたようなのでしたから,男性が目を覚ませば自分で通報なりして措置すると思いました。
- 交差点の中に止まっていたのだから,そこまで酔っ払って運転してきたと思うのがあなたたちの考えで普通なんじゃないですか。
- 酔ってきた可能性はあると思いましたけど。
- それでは立件できないんですか。
- 運転しているところをだれも見ていませんから,それを立件することは難しいと思います。
- 本当は,久保さんを酔っ払い運転をした本人,あるいは泥酔者というふうに思って署に連れて帰ったんじゃないんですか。
- いいえ,それはありません。
- 本当ですか。
- はい,ありません。
- そういうふうにするような処置というのは,あり得るのではないですか。こういう泥酔者が寝ていて,酔っ払い運転の現行犯だと思われるという場合に,いったん連れて帰って後で事件として処理するというふうなことは、するんじゃないですか。
- 私が扱ったときには,近くにホンダクリオというところがありまして,そこのところまで移動しただけですから,警察に運んだということは全くありません。
- あなたは,現場に来てから本署のほうとは連絡はとったんですか。
- 本部の通信指令課には,現場に到着したということは入れまして,その後はナンバーの照会とかもしていますので。
- 最初に現場に到着したときに,まず一報を入れたのですね。
- はい。
- それは,近くに寄って見る前ですね。
- そうです。
- その次に連絡をしたのは,ナンバー照会するときですか。
- はい,そうです。
- ナンバー照会するまでの間は,連絡は取り合っていないわけですね。
- 取り合っていません。
- ナンバー照会したときに,これこれこういう状況でこういうふうになっていますという報告はしたんですか。
- そのときはしていません。
- ただナンバー照会しただけですか。
- ナンバーから所有者を照会しました。
- それだけですか。久保さんの状況とか車の状況については報告していないんですか。
- そのときはしていません。
- それはいつ報告したんですか。
- 最後に警ら活動に移行する前です。
- まだ現場にいるときですか。
- そうです。
- 一とおり報告をして,本部からはどういうふうな応答がありましたか。
- 本部からは,了解しましたという回答だけです。
- そのときはだれが応対しましたか。
- 青地巡査です。
- 本部のほうは。
- 本部のほうは分かりません。
- この件についての報告書としては,どういうものを作成されましたか。
- この取扱について作成した書類はありませんけど,勤務表には,何時何分にどういう扱いをしたとか,24時間勤務ですので,時間時間に扱ったことを記載するのが勤務表です。
裁判長
- 本件の処理がいつ終わったとか,その終わった時刻ぐらいの記載はあるということですよね。
- はい。
原告ら代理人(中西一裕)
- 110番処理簿のようなものは作っていないですか。
- 私は作っていません。
- 110番の担当者は作っていますか。
- 110番の本署の幹部は作っていると思います。
- この後,本件は原告の久保さんからいろいろクレームをつけられて,警察側から見ればクレーム案件になっていると思うんだけれど,事実調査報告書というものを作っていますよね。
- その後に,取扱の状況の書類は書きました。
- あなたと青地さんが中心になって詳しいものを作ったんじゃないですか。
- 作りました。
- あなたは,この件に関する処理が警察官の警ら活動としては、特段問題はなかったと思っているわけですか。
- ええ,問題なかったと思っています。
- 本件に関して,本件の事故処理で,あなたと青地巡査は懲戒処分を,具体的に言えば戒告を受けているんじゃないですか。
- はい,受けました。
- あなたたちだけではなくて,署長や副署長,直属の課長なんかも注意とか訓戒処分を受けていますよね。
- 詳しいところまでは分かりませんけど,処分を受けたとは分からています。
- その理由は今説明できますか。
- 現場の状況を適切に上司に報告しなかったことです。
- 適切に報告しなかったというのは,具体的にはどういうことですか。
- その場で詳しい状況を報告していなかったからです。
- 死んだ久保さんの身元の確認や,再臨場による覚醒状況,つまり久保さんが起きたかどうかという覚醒状況の確認なんかについて,きちんと報告を怠ったというふうに言われているのではないですか。
- いいえ,現場での報告の仕方が足りなかったのではないかということで処分を受けました。
- 久保さんの身元の確認とか,現場に再臨場して覚醒状況を確認する事が不十分だったと書かれているでしょう。
- 再臨場というところはちょっと分かりません。
- よく覚えていないのですか。
- はい。
裁判長
- あなたとしては,報告が不十分だったという具体的な中身はどのようなものだと理解していますか。
- 現場で報告が足りなかったことと。
- 足りないというのは,具体的な中身はどういうことに関して足りなかったという指摘だったというふうに理解していますか。
- 処理結果を本部に報告した際に,車両を移動させて結了しましたというようなところぐらいまでしか報告していませんので、そういうことと、このような事案になったので警察としてちょっと信用を失墜させたというようなことだと思います。
原告ら代理人(中西一裕)
- 久保さんが死んじゃったということで,そのときの久保さんに対する扱いに適正を欠いたということでしょう。
- 扱い自体は関係ないと思います。
原告ら代理人(大野裕)
- 靴を発見したというんですけど,どんな靴だったか覚えていますか。
- 黒い革靴だったことを覚えています。
- さっき,勤務表とおっしゃいましたよね。
- はい。
- それは,あなたが作って,どなたかに提出するものなのですか。
- 勤務表は,青地巡査が作成しまして,それを交代のときに上司に提出します。
- 上司というのはだれですか。
- 私の上司は地域2課の係長です。
- その勤務表というのは,最近見たことはありますか。
- 最近は見ました。見たというか,コピーがありますので,それを見ました。
- それはこの尋問に先立って見てきたのですか。
- そうです。
- この日現場に到着してから,この現場をあなたが去るまでの間,久保さんが声を発したということは一度もなかったということですか。
- ありませんでした。
- 足を担ぎ上げたときも声を発しなかったということですか。
- ありませんでした。
- 自分で目を開けたということはありますか。
- 自分で目を開けたこともありませんでした。
- 一度もないですか。
- はい。
- 免許証を探したとあなたはおっしゃったけれど,どこを探したということですか。
- 男性のズボンのポケットを上からたたくような感じで探しました。
- ほかには。
- あとは車内を目で確認しました。
- 具体的にどこを探したのですか。
- 久保さんを中心として,運転席の周りとかそういう場所です。
- 普通探すとき,当然いろんなところを開けたりしますよね。具体的にどこを探しましたか。
- 開けたりしたことはありません。
- 普通,免許証はどこに置いていますか。
- 普通は免許証入れか財布で,ズボンのポケットに入れるか,カバンを携帯している人であればカバンの中に入れると思いました。
- 持ち主を探すために,車内のいろんな構造物を開いたりということはしていないんですか。
- ダッシュボードを探そうとしたんですけど,ジープでしたのでダッシュボードが普通の車のある位置になかったので,そこまでは探せませんでした。
- あなたは,事故後,久保さんの家を訪ねたことはありますか。
- あります。
- そのときに,あなたが久保さんに対してした説明の要旨は覚えていますか。
- 詳しくは覚えていません。
- 久保さん宅で,あなたがどう発言したかは覚えていませんか。
- 詳しい内容までは賞えていませんけど,取扱の経緯を説明したのは覚えています。
裁判官(長久保加奈子)
- 先ほど,交差点に停車して運転者が後で起き出して運転して帰れるという類似の案件を見たことがあると,扱ったことがあるというようなことをおっしゃいましたね。それは,本件のように車両に事故の痕跡があるような案件でしたか。
- いいえ,それは事故の痕跡はありませんでした。
- 頭頂部の外傷の確認の話が出ましたけれども,頭髪内の頭頂部に外傷を受けたようなことはないかとか,こぶがあるのではないかということは疑いましたか。
- そこまでの記憶が今ないんですけど,そのときはそんなに顕著なものはなかったと思います。
- ほかに,全体から見て外傷がなかったということをおっしゃっていますけれども,具体的な検査の方法は,先ほど顔面の検査の方法が補充で入りましたけれども,同じように,どのように見て外傷がなかったと認識されているのか,その具体的な検査の方法をおっしゃってください。
- 外傷がないのは、露出している部分、顔とか首とか両腕とか,そういうところでは外傷がないのは一見して分かりました。
- 両腕というのは,当時の幹郎さんの服装は覚えていますか。
- 半袖のグレーっぽいシャツだったと思います。
- 半袖の袖から下,手の先のほうに向かう部分に外傷がなかったと。
- はい。
- 服をめくってみたりということはしなかったということですね。
- していません。
- それは,必要がなかったと判断されたということですか。
- それは,保護するときに警察の職務の範囲内でそこまではちょっとできないので,しませんでした。
- 先ほど,警察学校で脳内出血に関する判断として瞳孔収縮の方法を習ったというふうに言っていましたけれども,習った内容として,瞳孔が収縮した場合には,脳内出血である可能性もないと判断できるというふうに習いましたか。
- 瞳孔が光りを当てて一瞬のうちに収縮すれば,それは正常な人間だというふうに教養を受けています。
- 具体的に脳内出血の初期段階だとか,どういった段階まで来たらそういう反応が起きるとか起きないということまで,詳しくは習わなかったのですか。
- そこまで詳しく習っていません。
裁判官(市村弘)
Bの写真を見て,どの部分が損傷しているのかということを,あなた自身が当時自動車を見た記憶とこの写真を比較してもう一度喚起してみてください。このフロントバンパーが変形している部分は分かりますか。
バンパーについては,当時確認していません。
左右のフェンダーミラーの状況を写真@で確認してみてください。片方は吹っ飛んでいるようですし,かなりの変形が見られるように思われますが,当時いかがでしたか。
右のフェンダーミラーについては,その当時確認していなかったように思いますけど,その下のフェンダーが曲がっていることは確認しています。
しかも,あなたが先ほど述べたように車のタイヤの一部がパンクしていることとか,フロントガラスの上部にあなたの供述によるとこぶし大のひびがあったということでしたね。
はい。
あなたとしては,当時このジープがどこかで事故を起こしたという認識はあったのでしょうね。
はい。
そうであれば,その損傷状況から見て運転していた方にある程度強い衝撃が加わったというようには全然お考えにならなかったのですか。
このときは,外部的な傷とかありませんでしたし,苦しんでいる様子とかもなく,寝ているようにしか見えなかったので,そういうことは思いませんでした。
何回も呼び掛けたり瞳孔反射の確認テストをしたりしても目を覚まさないと。しかもジープは相当程度損傷している箇所が何カ所もあるという状況ならば,あなたとしても万が一乗っていた方がけがをしているのではないかだとか,何か重大な事故に巻き込まれたのではないかだとか,そういった点について対処しようというようなことは,当時全然お考えにならなかったのですか。
そのときは,先ほどお話ししたような状況でしたので,思いませんでした。
裁判長
- 車のナンバー照会から,所有者を一応割り出したということでしたね。
- はい。
- どのような目的で所有者を確認しようとしたわけですか。
- 家族に連絡できれば,しようと思ったと思います。
- 幸い,車のナンバーから所有者と思われる氏名は特定できたのですね。
- はい。
- 家族の方に連絡を取ろうとしなかったようですが,それはなぜですか。
- 車を安全な場所に移動したことで,駐車苦情としての措置は終わりましたし,比較的お酒も軽かったので,そのうち運転手が自分で目を覚まして対応できると思ったので,大丈夫だと思いました。
- あなたの認識を前提としても,まず深夜,かなり大きな交通の繁忙な交差点の右折レーンで車が止まったままになっている,そこで運転手がいわば寝込んでしまっているようだと。そして車自体に自過失の痕跡がかなり明確にある。そして,救護措置を取ろうとしている間も全く反応がないという状況で,所有者が判明したとすれば,所有者の家族にともかく連絡を取ってもらうと。もらいたいということで所轄の警察その他に連絡を取るのが普通自然の流れのように思うのだけれど,それをしなかったということが分かりにくいのですが,どうしてなんでしょうか。
- そのときは,やはり酒に酔って寝込んでしまったものと思っていましたので。
- いずれにしても,普通考えた場合に,こういう時間帯でしょう,当然家族の人だって,家族がいればどうなっているかと心配している時刻でしょう。だから,あなたの警察官としての職務の内容が一種の地域の安全サービスだということであるとすれば,そこまで連絡を取ってもらうように連絡を取ろうとするのが普通な感じはするんですが。
- そのときは,そこまででもう大丈夫だと思ったんで,しませんでした。
- 今の時点で見て,あなたとして本来ならばどういう措置を取るのが適切だったかとか,そのような反省は何かありますか。それとも,もう反省すべき点はないということになりますか。
- その当時の状況から,保護についてはしなかったのは自分の判断には間違いはなかったと思います。
- そこまでサービスする必要はないということですか。
- サービスするというより.保護の定義として,泥酔者とも認められなかったし,けがも病気もちょっとその場では明確には分かりませんでしたので,保護しなかったことについては,それはそれで適正な処分だったと思います。
被告神奈川県代理人(金子泰輔)
- あなた自身が久保さんの家族に連絡していないのは分かるんですけれども,保土ヶ谷署の方が家族に連絡を取ろうとしたかしないかについて,あなたは知っていますか。
- その後に,本署の幹部が久保さんの自宅にそのときに電話を入れたということは伺いました。
- 中島さんですよね。
- はい。
- 対光反射について確認しますが,これは,泥酔者に限らず,起きない人には通常行うという扱いであると理解していいですか。
- はい,そうです。
- あなたの懲戒理由の中に,この場所での久保さんに対する処理が不適性であったという理由が入っていますか,入っていませんか。
- 入っていないと思います。
以上
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