青地巡査長本人調書
事件当日の未明、最初に現場に駆けつけたパトカー巡査2名のうち、青地巡査長による証言反訳書の全文。証言のポイントは次の通り。
- アルコールの種類は分からないが、酒のような臭いが久保氏の顔の方からしていた。
- 「起きて、起きて」と4〜5回以上、膝を叩いたが、久保氏は起きなかった。酒と疲れからぐっすりと寝ているようにしか見えなかった。着衣に乱れはなく、外傷もないので、目が覚めれば自分の意思で行動できると思った。
- 久保氏の血液からアルコールは検出されていないとのことだが、酒酔いとの自分の判断に間違いがあったとは思わない。
- 走行中を見ていないこと、また、酒の臭いも弱く、普通に寝ているようしか見えなかったので、酒酔い運転者として職務質問をしたり呼気検査はしなかった。(ただし、「酒に酔って、いずれかの場所で自過失事故を起こし、車両が正常に動かなかったため、信号待ちで停車した際に、そこが安全な場所と誤信し、寝てしまったものと認めた」との答弁書の記述と異なると指摘され、答えに窮している。飲酒状態で走行をしていたこと、事故を起こしたことの認識があったなら、職質をせず「普通に寝ている」との認識は有り得ない。)
- 対光反射で瞳孔が収縮したので、脳内出血ではないと分かった。
- フロントガラスのひび割れの大きさについて、自分は記憶にない。
- 免許証は探したが発見されなかった。(「無免許運転ではないか」と言われ、答えに窮している。)
- 本署に連絡をした際、車のナンバー照会から車の所有者が久保氏であることを知ったが、車内に久保氏がいたこと、対光反射テストを行ったことは報告しなかった。
- 本署から久保家に連絡をしてもらうよう依頼はしていない。中島警部補が久保家に架電したことは、後で知った。
- 自分が懲戒処分を受けた理由は、駐車苦情事案として車両を移動させたことを報告し、それで結了させるという、簡略な報告をしたことである。
平成14年10月25日
宣誓
良心に従って真実を述べ
何事も隠さず、
偽りを述べないことを
誓います。
氏名 青地隆宏
被告神奈川県代理人(金子泰輔)
乙A第1号証を示す
- この陳述書は,あなたが作成したものですね。
- はい,そうです。
- あなたの勤務経歴や現在の勤務先については,陳述書のとおりでしょうか。
- はい,保土ヶ谷署の地域2課で勤務しております。
- 勤続年数はどれくらいになりますか。
- 約22年になります。
- 警察官として,今までに主にどのような仕事をしてきましたか。
- 主に地域課として勤務しております。
- あなたは,平成9年7月19日の深夜にパトカー乗務員として勤務中,原告久保佐紀子さんの夫である久保幹郎さんが乗った車両に関する事案を取り扱いましたね。
- はい,扱いました。
- どういういきさつであなたがこの事例を取り扱うことになったのですか。
- 110番で,本署幹部より署活系無線で指令がありましたので扱いました。
- あなたもその指令をお聞きになっていると思うので確認しますが,本署幹部からの指令はどういう内容でしたか。
- 110番で三ッ沢上町交差点にジープが止まっているという,駐車苦情の110番の通報があったので現場へ向かえというものでした。
- 本署幹部の指令として,駐車苦情の事案だよという指令があったわけですね。
- はい,そうです。
- 指令を受けたときに,どのような事案だと思いましたか。
- 三ッ沢上町の中で通報が入っていましたので,ジープがかなり迷惑な方法で止まっている事案と思いました。
- それで現場に向かったという流れですね。
- はい,そうです。
- あなた自身がジープを初めて発見したのは,どの地点になりますか。
- 三ッ沢公園のほうから参りましたので,三ッ沢上町交差点で信号で止まり,国道1号線を挟んで反対側にジープが止まっていました。
- 甲第5号証の写真@を示す
先ほど村井さんにも確認していただきましたが,この写真は時間の点は別にして,当時の現場付近の状況と変わりありませんか。
- はい,ありません。
- さっき村井さんにうかがいましたが,その後,パトカーを結果としてはジープの後方に止めたわけでしょうか。
- はい,そうです。
- このとき,ジープはどのような状態で止まっていましたか。
- 停止線の手前に,ハザードランプをつけて止まっていました。
- どのくらい手前だったか,距離は覚えていますか。
- 約10メートルほど手前だったと思います。
- ジープ付近での一般の通行車両は,どのくらいでしたか。
- 昼間ほどは多くありませんで,1回の赤信号でジープと同じ右折車線上に止まる車が大体四,五台程度です。
- ジープの同じ車線ですか,隣の車線ではありませんか。
- 隣の右折車線です。
- 写真を見ると,右折専用車線が2本ありましたよね。
- はい。
- ジープから見て隣の車線に,今おっしゃったように赤信号で止まる車両が四,五台あったという状況ですか。
- はい,そうです。
- ジープの後方に止まった後,あなたはパトカーを降りてジープに近付いていったようですね。
- はい,そうです。
- ジープに近付いていったら,どうだったのでしょうか。
- 中に人が寝ていました。
- あなたとしては,ジープの運転席側ドアを開けて車内を確認したわけですか。
- はい,そうです。
- 車内は,どのような状態だったでしょうか。
- 中に男の人が寝ていました。
- どんな状態で寝ていましたか。
- 年齢が40から50歳ぐらいの男の方が,頭を助手席のほうにしまして,足を運転席側のほうにしまして,シートの上でひざを立てた状態で寝ていました。
- あなたが車内でそういう状況をごらんになっているときに,村井さんは何をしていたのでしょうか。
- パトカーの拡声器で運転手さんを呼び戻すために広報をしていました。
- まだこのときは,村井さんは車内に人がいるかどうかは分かっていないわけですね。
- ええ,分かっていません。
- 流れとしては,その後,あなたが村井部長に報告をしに行ったという順序になりますか。
- はい,そうです。
- 村井さんに報告した後,もう一回村井さんと2人でジープのほうに戻ってきて,車内の様子を確認したという流れですね。
- はい。
- 男性の状態を話していただきましたが,あなたとしては,寝ている状態と思ったわけですね。
- はい,そうです。
- どうして寝ていると思ったのでしょうか。
- 車内からお酒のようなにおいもしましたし,普通に呼吸もしていましたし,着衣の乱れもけがもありませんでしたので,普通に寝ているようにしか見えませんでした。
- 顔色はどうでしたか。
- 普通の顔色でした。
- 車内は暗くなかったですか。
- 近くに街灯がありましたので,車内を見るには特に支障はありませんでした。
- 寝ている男性を見て,あなたは何をしましたか。
- ひざを揺すりながら、起きて起きてと数回声を掛けました。
- それに対する男性の反応はどうだったのですか。
- 寝たまま起きませんでした。
- このときに,車内の運転席の床に靴があったかなかったか,あなたは見た記憶はありますか。
- 私は、そのとき運転手を注視していましたので,そっちのほうは気付いてはいません。
- あったかなかったか,いずれも分からないということですね。
- はい。
- 吐潟物については,あったかなかったかについてはどうですか。
- それも見ていません。
- その後,ジープの外見の状況は確認しましたか。
- 起こしている途中に,村井部長からタイヤがパンクしていることを聞きまして,ジープの外見を確認しに行きました。
- あなた自身も見たわけですね。
- はい,そうです。
- ジープの外見はどんな状態でしたか。
- 左前輪のタイヤがパンクしておりまして,前の左右のフェンダーがへこんでいました。
- その損傷以外に,車には何か損傷はありましたか。
- いいえ,ありませんでした。
- フロントガラスのひび割れがちょっと問題になっているんですけれども,あなたはそのことには気付きましたか。
- 気付きませんでした。
- 今おっしゃったようなジープの外見を見て,あなたはどのように思いましたか。
- どこかで事故を起こしてきたように見えましたので,ジープの周辺を確認しようと思いました。
- ジープの周辺はどのような状態だったでしょうか。
- ジープの周辺には,ジープの相手となるような車もおりませんでしたし,ガラス等の事故の痕跡のようなものも落ちていませんでしたし,ガードレールにも事故の痕跡のようなものはありませんでした。
- そういう周囲の状況とかを見て,ジープはどのような事故を起こしたとあなたとしては思ったのでしょうか。
- 交差点に来る前に,ガードレールのようなものに接触したような事故を起こしたと思いました。
- そこに止まっているジープはその後どうしましたか。
- 交通妨害になりますので,近くのホンダクリオの前に移動しました。
- 村井さんがジープを運転して,あなたはパトカーで移動したということですね。
- はい,そうです。
- ジープを移動させた後,まず何をしましたか。
- 村井部長がジープから降りましたので,私がいったん運転席から中に入りまして助手席のロックを開けまして,いったん車外に出まして,助手席のほうに回りまして男の人を起こそうとしました。
- 具体的には,どういうふうにして起こそうとしたのですか。
- 「起きて。」と言いながら男性の右肩をたたきました。
- それに対して,男性は何か反応しましたか。
- 首をわずかにゆっくりと動かしまして,右手を上のほうに動かしてきました。
- 右手というと先になりますが。
- 右腕です。
- 右腕を動かしたのですね。
- はい,そうです。
- そういう男性の反応を見て,あなたはどう思いましたか。
- 酒気を帯びて寝ていると私は思いました。
- 病気や事故の影響とは思わなかったのでしょうか。
- 思いませんでした。
- どうして思わなかったのですか。
- お酒のようなにおいもしていましたし,普通に呼吸もしていまして寝ているようにしか見えませんでしたし,あとは着衣の乱れもありませんし,普通に呼吸もしていましたので病気や事故とは思いませんでした。
- けがをしているかどうかの様子はどうでしたか。
- けがもしていませんでした。
- そういうふうに寝たまま起きないわけですけれど,この男性に対してその後何をしましたか。
- 対光反射の検査をしました。
- どうして対光反射検査をしたのでしょうか。
- 普通に寝ているようにしか見えなかったんですけれども,念のために脳内出血かどうかの疑いが分かる検査をしました。
- 念のためということですね。
- はい,そうです。
- どのようにして,具体的な検査を実施しましたか。
- 私が男性の右のまぶたを開けまして、懐中電灯の光りを当てました。
- そのようにしている最中,男性は何か反応をしましたか。
- まぶしそうに顔を背けながら,私の持っていた懐中電灯や光りを振り払うようなしぐさをしてきました。
- 振り払うようなしぐさは,左右どちらの手でしましたか。
- 右手でしてきました。
- あなたの陳述書だと、4ページは右手になっていて7ページが左手になっているんですけれど,右手が正しいのですね。
- はい,右手のほうが正しいです。
- 7ページは誤字ですか。
- そうです,右手のほうです。
- そういう対光反射検査をした結果,何が分かったのでしょうか。
- 脳内出血でないことは分かりました。
- それはどうして分かりましたか。
- 瞳孔が普通に収縮しましたし。
- それで分かったのですね。
- はい。
- その後は,何をしましたか。
- 私はその場に残って,もう一度対光検査をしました。
- 2回目ですね。
- はい,そうです。
- その結果はどうだったでしょうか。
- 前回と同じように普通に収縮しました。
- 瞳孔が収縮したわけですね。
- はい。
- この検査の結果を踏まえて,男性はどういう状態であるとあなたは思いましたか。
- 酒などの影響で寝ており,目を覚ませば自分の判断で行動できるものと思いました。
- 自分の判断で行動できるというのをもうちょっと具体的に言うと,どういう行動をとると考えましたか。
- 自分の判断で車を移動したり,帰宅できると思いました。
- 男性の身元の確認はどのようにしましたか。
- 村井部長が車内から運転免許証を探していました。
- 結果として見つかりましたか。
- いいえ,見つかっていません。
- 身元を確認するために,どんなことをしたのでしょうか。
- 私はジープのナンバーを本署の幹部に照会を依頼しました。
- あなたがしたわけですね。
- はい,そうです。
- ナンバー照会の結果はどうでしたか。
- ジープの所有者が久保幹郎さんということが分かりました。
- その後はどうしましたか。
- 目を覚ませばもう大丈夫だろうと思い,本部の通信指令課に措置結果を報告して所定の警ら活動に移行しました。
- もう大丈夫というのはどういうことか,もうちょっと具体的に言っていただけますか。
- 酒のにおいも弱いことでしたので,比較的短時間に目を覚まして,目を覚ませば自分の意思で行動できると思いました。
- この日の勤務交代は,朝の10時過ぎだったそうですね。
- はい,そうです。
- 勤務交代の際,本件事案は引継をしていませんね。
- はい,していません。
- なぜしなかったのでしょうか。
- 現場での措置は終わっておりますし,引き続き措置を必要とする事案ではありませんでしたので,してはおりません。
- その後,あなたが地域課長から久保さんが亡くなったことを聞いたわけですね。
- はい。
- それを聞いてどう思いましたか。
- 驚きました。
- どうして驚いたのですか。
- 私が取り扱ったときには,普通に寝ているようにしか見えませんでしたので,とても驚きました。
- あなたは,酔って寝ているんだと判断したのはなぜなのでしょうか。
- 男性の顔のほうからお酒のにおいもしましたし,酒と疲れで睡魔に襲われて寝ているようにしか見えませんでしたし,けがもありませんし,普通に呼吸もしていましたし,対光反射した結果も普通に瞳孔は収縮しましたし,検査途中にも反応してきましたし,その結果からそう思いました。
- 保護の必要性を認めなかったのはなぜですか。
- お酒のにおいも弱いこともありまして,泥酔者ではありませんし,お酒と疲れからぐっすり寝ているようにしか見えませんでしたし,やはり対光検査でも普通に瞳孔が収縮しまして反応もありましたし,あとはけがもありませんし、着衣の乱れもありませんし,普通に呼吸もしておりましたので,その点から保護の必要ないものと私は思いました。
原告ら代理人(今村核)
- あなたは,久保さんを起こすためにどう.いうことをしたとおっしゃいましたか。
- 右ひざを揺すりながら声を掛けました。
- どういうふうに声を掛けましたか。
- 「起きて起きて。」と。
- それを何回ぐらい繰り返したのですか。
- 四,五回以上は声は掛けたと思います。
- あなたは陳述書では10回ぐらいと書いていますけれども,どちらが正しいのですか。
- 詳しく何回というはっきりはあれですけれども,四,五回以上,10回,その範囲内では声は掛けています。
- それだけですか。ほかにも,起こそうとしたことを先ほど述べていますね。
- はい,移動してから肩をはたきながら「起きて。」と声を掛けました。
- 「起きて。」と大きい声で言ったわけですか。
- はい,「起きて起きて。」と言いました。
- 先ほどの右ひざをたたきながらというのも,大きい声で言ったわけですか。
- はい。
- その間,あなたが起こそうとしている努力を2回しているわけですよね。
- はい。
- その間,ジープは移動しているわけですね。
- はい,しています。
- ジープを移動する前と移動した後に起こそうと努力をして,大きい声で「起きて起きて。」と言ったと。
- はい。
- その間,ジープは左前輪をバーストした状態で走っているわけですね。
- はい。
- 久保さんの頭は助手席にのっていたわけでしょう。
- はい,そうですね。
- 助手席というのは,車の左側ですね。
- はい。
- まさにバーストしているタイヤの上に頭はのっていたわけですね。
- はい。
- あなたもパンクした車を運転した経験はおありですね。
- いいえ,私はありません。
- 非常にがたんがたんと揺れるということはご存じですか。
- 体験したことはちょっとありませんので,よくは分かりません。
- それでも久保さんは起きないわけですね。先ほどの青地さん(注:「村井さん」の誤りと思われる。)のお話だと,更に両足を担ぎ上げて上に持ち上げて逆さにするような格好にして,これを後ろ座席に下ろしたという姿勢であるわけですね。
- はい。
- それでも起きないと。
- ええ,起きませんでした。
- あなたは,酒酔いの程度でどういう段階があるというのはご存じですか。
- はっきり詳しくは分かりません。
- 泥酔期というのがありますよね。
- ・・・・・・。
- 泥酔期というのは,まさに起こそうとしても起きない状態を言う.わけでしょう。
- それはちょっと詳しくは分かりませんけど。
- 泥酔期の前の酩酊期であれば,普通起きますよね。終電車で眠り込んで駅員さんに起きて起きてと。皆起きて帰りますよね。
- はい。
- あなたは,それでも異常がないというふうに思ったわけですか。
- そのときには,深く眠っていると思いましたので。
- あなたは,陳述書では酒のような弱いにおいと。弱い酒のようなにおいというふうに書いているんですよ。
- はい。
- 酒のようなというのは,どういうことなんですか。
- 口ではちょっとうまく説明できませんので,アルコールのような,アルコール臭,それを種類で言うのけ難しいですので,酒のようなにおいということで表しています。
- 先ほどの村井さんの話だと,ビールか酒かウィスキーか特定できないから、ようなという(注「というような」の誤記と思われる。)言葉を使ったみたいな説明だったけれども,あなたも同じような考えなわけですか。
- そうですね,はっきりは分かりません。
- 日本酒もビールもウィスキーも全部お酒だけれど,それでもお酒のようなとなるわけですか。
- ・・・・・・・。
- あなたは,酔っ払いの保護の経験が非常にあるということですね。
- はい。
- 酔っ払いの保護の経験では,泥酔者は大体どんな場所で寝ている場合が多いですか。
- 表ですね。道路上もあります。
- 道路上で寝っころがっているのですか。
- はい。
- 酔っ払って,そのまま道路上で寝込んじゃったと。
- はい,あとは車の中もあります。
- 本件の場合,まさに車の中だったわけでしょう。
- はい。
- しかも道路の真ん中ですね。
- はい。
- 酒に酔った状態で,車を運転していたと思ったわけですね。
- 実際には見ていませんので。
- 見ていないにしても,車を止めて,その後お酒を飲んだというふうに考えたわけですか。
- いや,それは分かりません。
- あなたの考えだと,交差点で,そこが安全な場所だと誤信してつい眠り込んでしまったというふうにおっしゃっていますよね。
- はい。
- ということは,その直前まで運転していたというふうに,あなたは思ったわけでしょう。
- そうですね,そのときは思いました。
- しかも,それだけやっても起きないような泥酔期にあると思われる人に対しては,職務質問をして呼気検査をするのが通常ですよね。
- いいえ,私がそのとき扱ったときには,お酒のにおいも弱かったですし.普通に呼吸していましたし,外傷等もありませんでしたので,普通に寝ているようにしか私は思いませんでした。
- お酒が入って運転したというふうに思ったわけでしょう。それだったら,呼気検査をしたり職務質問をするのが通常じゃないですか。
- そのときは見ていませんので,車を運転しているのを。
- しかも直前に事故を起こしているということですよね。酒酔い運転で事故を起こしたわけでしょう。
- いや,それはその段階では分かりません。
- そういう疑いは持たなかったのですか。
- その場所ですけれども,事故の痕跡も.ありませんし,ガードレールにもそういうような痕跡もありませんし,相手もおりませんし。その点から,その場所でないことは分かりましたけれども。
- あなた方の答弁書には,代理人があなたの代理人として作成した文書のことですが,22ページに,ほろ付きジープが三ッ沢上町交差点内に駐車していた原因は,男性が酒に酔っていずれかの場所で自過失事故を起こし,車両が正常に動かなかったため,信号持ちで停止した際にそこが安全な場所であると誤信し寝てしまったものと認めたというふうに書いていますね。
- はい。
- これがあなた自身の認識なんじゃないんですか。そう認めたというのは,村井さんとあなたの認識をここに書いているんじゃないんですか。
- ・・・・・・
- 酒によって自過失事故を起こしたと。
- はい。
- これはかなり重大な事件ですよね。しかも,その現場で起こしたのではないとすると,パンクした状態で現場から遠ざかってそこに来たということですよね。
- はい,そうです。
- つまり当て逃げなんですよ。
- いや,その段階では・・・。
- あなたは,酒に酔って本当にそういう事故が起こったんだったら,当然捜査すべきですよね。パトカー勤務の目的は何ですか。
- 事故初動的な措置ですね。
- 先ほどの村井さんのお答えによると,犯罪を予防し検挙する活動だというふうにおっしゃっていますよね。
- はい,そうです。
- まさにその犯罪の疑いがあるわけだから,検挙しなきゃいけないんじゃないですか。
- いや,そのときには・・・。
- しかも,先ほど村井さんのお話だと、かなり運転免許証をくまなく探しているわけですよね。あなたも村井さんが運転免許証を探しているのはごらんになっているでしょう。
- ええ,探しているのは分かっています。
- 着衣の上から,それから車内をくまなく探しても見つからないわけですよね。そうすると,無免許運転じゃないんですか。
- ・・・・・・・。
- あなたは,なぜその場に放置していくわけですか。
- 放置はしていません。
- 無免許運転の疑いがあるわけでしょう。
- 事故ですけれども,ガードレールなどに接触した事故だと思いましたし,そのときに当て逃げや人身事故ですと通報や手配が入りますけど,そのときは当て逃げ,手配は入っていませんので。
- あなたの答弁書によると,その場所が安全な場所だと誤信したと,誤信して眠り込んでしまったものと認めたと書いてあるんですが,あなたは,ハザードランプを認めたわけですよね。
- ハザードランプはついていました。
- ジープを見て最初に気が付いたことは,ハザードランプがついているということじゃないですか。
- ジープが止まっていることは,まず気付きました。
- 止まって,まず目に留まるのはハザードランプがついているということですね。
- ええ,ジープが止まっているのとハザードランプは分かりました。
- ハザードランプというのは,どういう信号だというふうに理解していますか。
- 一般的には駐車する場合につけますけど。
- ハザードランプというのは,危険を発する信号ですよね。
- 言葉ではそういう内容ですけれども,一般的に運転手が使う場合には,普通駐車する場合にハザードランプを使いますので。
- その場所は,あなたは非常に危険だと思って車をどかしたわけですよね。
- ええ,交通妨害だと思いました。
- そんなところに止めてあるのは危険だと思ったわけですよね。
- 交差点ですので,交通妨害になりますから。
- あなたは陳述書では,危ないから移動しようというふうに書いてあるんだけれども、危ないというふうに思ったわけでしょう。
- 交通妨害とは思いました。
- 危ないから移動しようというのは,陳述書に書いてある内容は違うということですか。
- 一般的に交差点は危険というか,車が来ますので,狭い交差点でも車両の少ない交差点でも移動したほうがいいと思いますし。
- あなたは,危ないから移動しようと思って交通上危険のないホンダクリオの出入り口付近に移動したというふうに陳述書に書いてあるんですよ。
- はい。
- それを書いたことはお認めになるのですね。
- そうですね,危険な場所から少ない場所へ。
- そこを運転手が安全だと誤信するというのは,おかしいと思いませんでしたか。
- それは眠気と酒気の状態で,そう思ったと思います。
- 眠気のあまり,つい睡魔に襲われて寝込んでしまったというふうに思ったわけですか。
- はい。
- あなたの理解だと,その前に交通事故を起こしているわけですよね。交通事故なんか起こしたら,ほろ酔い気分なんて一遍にさめるんじゃないですか。
- それは人によっても違いますけれども,ガードレールに接触した場合でも,普通に酒気を帯びている場合でも眠い場合でも,やはり寝てしまう可能性はあると思います。
- 眠りたくなくても寝込んでしまったというふうに思ったわけですか。本人は起きていようと思ったんだけれど,つい睡魔に襲われて寝込んでしまったと理解したんですか。
- お酒の影響と睡魔で。
- それだったら,先ほども村井さんも聞かれていましたけれども、靴を脱いでどっこいしょと足をそろえて横になるというのはおかしいじゃないですか。それは睡魔に襲われた寝方じゃないでしょう。
- それは人によってありますので,それは不思議とは思いませんでした。
- あなたの交通事故車両に対する認識ですけれども,どことどこが破損しているというふうに認識しましたか。
- 左前輪と前のフェンダーです。
- 左のタイヤのバーストと。
- パンクは分かっていますけど。左のタイヤとあとは前の左右のフェンダーです。
- 左右のフェンダーがへこんでいるということですか。
- はい、そうです。
- それから。
- 私はそれだけです,気付いたのは。
- それだけですか。
- はい。
- 久保さんのジープが警察署に保管されていた時期がありますね。
- はい。
- 何月何日から何月何日までか,大体記憶していますか。
- いいえ,それは分かりません。記憶していません。
- 事故が起きた97年7月21日から8月4日にかけて保土ヶ谷署に保管されていたということだと思うんですけれども,大体あなたの記憶としてもそのぐらいの期間,警察署で保管していたという記憶がよみがえりますか。
- いや,それははっきりは覚えていません。
- 1日や2日じゃなくて,1週間とか10日とか2週間と示,そのぐらいの期間,警察署にあったという記憶がありますか。
- もう大分前なので,日数的なものは覚えていません。
- 警察署のどこに保管していましたか。
- 駐車場だと思いましたけれども。
- 駐車場に置いてありましたか。
- はい。
- あなたとしては,かなり気になったでしょう。あなた自身が臨検した事件で人が亡くなっちゃって,その件でジープが置いてあると。これは気になって気になってしょうがないんじゃないですか。
- それほどの状態ではないですけれども,一応ジープは見ました。
- その警察署内にあるジープを見て,どこが破損しているか分かりましたか。
- やはり左のタイヤと,あとはフェンダーです。あとはフロントガラスですか,それは分かりました。
- フロントガラスは,どういう状態になっていましたか。
- そのときにはひび割れの状態になっていました。
- 甲第6号証の写真E及びFを示す
あなたが保土ヶ谷警察署の構内で見た車のフロントガラスのひび割れというのは,この写真に写っているような状態でしたか。
- 大きさ的にはちょっとはっきりは覚えていないんですけれども,記憶にありませんので,大きさ的には。この場所にひびがあるということは分かりました。
- クモの巣状にひび割れていることは分かりましたか。
- それは余り記憶はありません。割れているということは分かりましたけれども,クモの巣状,大きさ的なものとか,そういうのはちょっと記憶にありません。
- 先ほど,村井さんがこぶし大だとおっしゃったんだけれども,それと比べてどうですか。こぶし大の大きさだったんですか,それとももっと大きかったですか。
- それは記憶にないです。
- 全然記憶にないですか。
- 割れていることは覚えていますけれども,大きさ的なものはちょっと記憶にありません。
- 割れていることは,あなたにとって印象に残ることでしたか。
- 割れていましたので,そのときは割れているという認識は持ちました。印象が強いか弱いかば,大分前ですので覚えていませんけれども。
- 血液検査のことですが,亡くなった久保さんのご遺体から血液を採取して,その血液のアルコール濃度が調べられたという事実はありますか。
- アルコールが出なかったという結果は聞いています。
- どこが調べたのですか。
- それは分かりません。
- 甲第13号証の1を示す
鑑定嘱託書とありますね。
- はい。
- 平成9年7月28日,保土ヶ谷警察署長の伊藤勝也さんが鑑定嘱託書を出していますね。
- はい。
- これによると,殺人被疑事件と書いてあるんですよ。殺人被疑事件となっていて,事件内容の概要の項で,被疑者は,平成9年7月19日ころ横浜市保土ヶ谷区岡沢町82番地ホンダクリオ三ッ沢店前路上に駐車中の自家用普通貨物自動車において久保幹郎をいずれかの方法により殺害したものであるというふうに書いてあるんですが,これは理解しますか。
- ええ,分かります。
- この殺人被疑事件ということで鑑定嘱託書が出たことは,あなたはご存じでしたか。
- ええ,分かっています。
- なぜ殺人なんですか。
- 司法の鑑定の書類上の件で,こういう題名がついたというふうに聞きましたので,あとは詳しい内容については,刑事のほうは分かりませ んので,詳しい内容は分かりません。
- しかも,これは保土ヶ谷警察署長名ですよね。
- はい。
- ただ,事件の亡くなった7月19日に司法解剖がなされて,心筋梗塞が死因だと特定されたというあなたは認識ですか。
- ええ,知っています。
- 解剖が実際なされたことは。
- 私は見ていませんので。
- 見ていないので分からないのですか。
- はい,私は分かりません。見ていません。
- アルコールが検知されなかったということは,後で知りましたね。
- 知りました。
- あなたは,自分の判断,弱い酒のようなにおいがしたというだけで酒酔いだと判断した,あなたのそのときの判断が間違っていたんだなというふうに思いましたか。
- いや,それは全く思っていません。
- あなたは,この駐車苦情事案を処理する前はどういうことをやっていましたか。
- パトカーでパトロールをしていました。
- パトカーに乗って何をしていましたか。
- 普通のパトロールで警らをしていました。
- 特に事件処理はなかったわけですか。
- ええ,なかったと覚えています。
- この事件の後,どんな事件を処理しましたか。
- 処理した後は,少年のい集事案。少年補導です。
- 具体的にはどんなことですか。
- 夜間,少年がたむろして話をしているとか,そういうことです。
- たむろしているのは何をしているんだとか,早く帰りなさいとか,そういうことですか。
- はい。
- 大した件じゃないですね。
- はい。
原告ら代理人(中西一裕)
- 最後の処理の仕方ですが,ジープを離れるときに止エンジンを切って離れたのですね。
- はい,エンジンは切っています。
- ジープはほろを付けたままで,扉も閉めて出たということですね。
- はい,そうです。
- これは7月19日で真夏で夜間でも結構暑いから,このまま放っておくと久保さんが相当暑くなって蒸しちゃうんじゃないかとは思わなかったですか。
- そのときはもう夜でしたので,あとは暑さも涼しかったように覚えていますので。
- 涼しかったのですか。
- はい。
- ナンバー照会をしたのはあなたですか。
- そうです。
- ナンバー照会をした上で,久保さんだということが分かったんですね。
- ナンバー照会をして,ジープの所有者が久保さんということが分かりました。
- 中島警部補に連絡を取ってもらうように,あなたが言ったのですか。
- いいえ,言っていません。
- それはだれが言ったのですか。
- 言っていません。
- 中島警部補はナンバー照会しただけで,その後どうするかということは分からなかったのですか。
- ええ,そのときは分かりません。後から電話したということは聞きました。
- あなたたちが現場を離れるときは,久保さんの自宅に中島さんが連絡をするかどうか,何もそういうことは関心を持たずに離れたわけですね。
- ええ,それは分かりませんでした。
原告ら代理人(大野裕)
これは平成14年7月3日付けですね。
はい。
この事件から5年近くが経過してから作られたものなんですけれど,これを作るに当たって記憶を呼び戻すために何か記録を見て作ったのですね。
ええ,昔作った書類を見たのと,あとは記憶で。
その書類はだれが持っているのですか。
その書類は,県の代理人が。
県の代理人の方は,事故当時作った書類を持っているということですか。
ええ,そのときは見ましたけれども。
そのときというのは,陳述書を作る際に,県の代理人の方は事故直後に作られた書類というのを持っていたということですか。
はい,書類はありました。
それには,この陳述書に書いてあるような趣旨の動きをあなたと村井さんがしたという記載が書いてある書類なんですか。
大元のは書いていますけれども,あとはほとんど記憶で書いています。
あなたが懲戒処分を受けた理由について。
確実な報告をしなかったということで。
何の報告ですか。
取扱の報告です。
処分を受ける理由として,本来こうすべきだったのをこうしなかったからという説明を受けるでしょう。
はい。詳細な報告をするのを簡略にしましたので,そのことからこのような事態が,誤解されるほうになりましたので,その点から報告がしていないということで懲戒処分を受けました。
事故の経過報告を上司に正確にしなかったからということですか。
そうです。
裁判官(長久保加奈子)
- 今のお話だと,簡略にしか報告しなかったというふうにおっしゃいましたけれど,具体的にどういう内容の報告をしたか覚えていますか。
- はい,車両を移動させ,結了です。車両を適う場所に移動して,それで事案を結了したということです。
- もう少し詳細にというのは,どう報告すべきだったとあなたは理解していますか。
- 行った当時に中に久保さんがいることと,どういうふうに処理した,移動した内容,あとは扱いの詳細です。
- 詳細というのは,今おっしゃったように対光反射で検査したとか,久保さんの状況がこうであったとか,そういうことをおっしゃっているんですか。
- はい,その内容を詳しくです。
- 対光反射検査を青地さんご自身がされたということですけれども,教育内容として,対光反射で瞳孔が収縮したという結果が出ますね。その場合,指導としては脳内出血では全くないと,そういうふうに判断できるというふうに教わったのですか。
- 瞳孔が収縮した場合には正常で,収縮しなかった場合には脳内出血の疑いがあるということです。
- そういう内容で教わったということですか。
- はい。
以上
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