では、なぜ押田鑑定においてSTR検査ができず、本田鑑定においてできたのか。本田鑑定と押田鑑定との間の決定的な違いは、当初の細胞の取り出し過程において、マイクロダイゼクタを使用していることであろう。 非常に高価な機械のため、これを備えている研究機関は限られている。 本田鑑定では、これを用いて、腐敗または低分子化が進んでいる細胞をよけ、正常な細胞のみを取り出したのち、ポリメラーゼ連鎖反応によってDNAを増やしたものと思われる。
マイクロダイゼクタとは、病理学検査やDNA・RNA検査のため、欲しい細胞や細胞核だけを組織片から切り出す機械をいう。例えば、ある組織片からガン細胞だけを取り出して研究に使いたい場合や、腐敗の進んでいる組織片から、正常細胞だけを取り出してDNA・RNA検査をする場合等に用いられる。薄切りした組織片に対し、フィルムに熱照射で貼り付けて切り取るレーザー式と、高周波振動を与えた微小チゼルで切り取るマイクロ・チゼル式に大別される。レーザー式は、切り取る細胞に熱を与える難点があるとされる。本田鑑定では、細胞に熱を与えないように、マイクロ・チゼル式を用いている。
レーザー照射式マイクロダイゼクションの例
出典:Molecular Machines & Industries社のページ。 ←クリックして動画を再生して下さい。 |
マイクロ・チゼル式マイクロダイゼクション
出典:エッペンドルフ社のHPの製品紹介コーナーより。 微小チゼルで細胞核を切り取り、吸引ピペットに入れているところ。 |
《翻訳文》 《元原稿》
原稿を拡大→画像をクリック。P.1
Molecular Technologies 応用MicroDissector PPMD (Piezo-Powered Microdissection)
下記試料からの細胞域、微細な細胞グループ、個別の細胞の単離まで可能。製品特徴
- 新鮮組織
- 組織学的切片
- 植物
- 培養細胞
PPMD式薄切り装置と電子制御のピペットからなる、フレキシブルなモジュラー・システム。
- 試料の迅速かつ正確な切り出し。
- 事前の処理をすることなく、全ての通常の試料に適用が可能。
- 厚さ僅か数μmから顕微鏡による微細領域まで何ら問題なし。
- 熱および紫外線による試料への影響なし。Tissue Engineering(組織工学)のための生体細胞の単離さえも可能。
PPMDの機能原理
新考案の超音波Piezostepperの採用により、超微細な金属針(微小チゼル)を高周波かつ低振幅で作動させます。これによって、普通の生体試料であれば、軟骨・骨組織さえも迅速かつ正確に切ることが可能となりました。個別の設定により、細胞、細胞組織、細胞グループの単離が行えます。
採取された試料は、あらゆる微小試験管、微小テスト用プレートの窪みに直接に移動させることができます。従って当然、PPMDの後のあらゆる下流プロセス(例:RT PCRまたは定量的mRNA発現分析)での応用が可能になります。分離された細胞の高い活性により、培養すらも可能です。
- 多量の細胞の回収にはintegrated pipette もしくは当社のFiltertips (MDS)の使用をお勧めします。
- 少量の細胞グループまたは細胞単体の回収には、当社は直径20μmのガラス製毛管CellTramRvario とTransferTipsR (MDS)を用意致しております。
(技術仕様は変更になる場合があります。)
P.2
Molecular Technologies MicroDissector PPMD (Piezo-Powered Microdissection)
PPMD応用例
(左側の翻訳)
生体細胞の単離(例:tissue engineering)PPMDを使うことにより、組織片から個別の細胞の単離が可能である。単離された細胞は培養液に維持することができる。
マウス胎児骨の幹細胞と分別した軟骨細胞(chondrocytes)の単離。微小チゼル(M)を使って、軟骨の小塊(N)が周囲の細胞から切り離される。完全に分離させたのち、小塊はFiltertip MDS(F)によって採取され、他のペトリ皿に移される。更なる培養を経て、小塊から細胞が成長し始める。
この応用例は、Dr. RohwedelとDr. Kruse (Institut fur Medizinische Molekularbiologie der Universitatzu Lubeck, Germany)の提供によるものです。
(右側の翻訳)
組織学的切片からの細胞域の単離(例:がん研究)細胞集団における分子遺伝的な変化の特性を見極めることは、腫瘍形成の過程を理解するうえで決定的な基礎といえます。このような分析はPPMDを使って対象細胞域を単離し、その後にRT PCR、mRNA発現差異その他の方法による試験によって実施されます。
組織片の種類と厚さに関する限り、PPMDの利用にあたって制約要因はありません。
ヒトの結腸粘膜からの細胞の単離。(出典:Harsch et al., 2001, Americ. J. Pathol, Vol. 158, No.6) 写真は、Dr. A. Niendorf (Medeea Forschungs GmbH,Hamburg)の提供。
注文情報
P.1
同一のローカス(検査座位)には、父母それぞれから受け継ぐ2つのアリール(対立遺伝子)しか存在し得ないが、「私的鑑定」では、下記のようにSTRの3ローカス(D8S1358, D8S1179, TH01)で3つ以上のアリールが検出され、明らかにコンタミネーション(臓器に由来しない人の細胞の混入)を起こしている。
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