押田意見書
横浜地裁判決を受け、鑑定人・日大押田教授が作成したDNA鑑定に関する意見書。


平成18年(ネ)第2861号 損害賠償訴求控訴事件
第1審原告 久保佐紀子ほか
第1審被告 神奈川県 ほか

DNA鑑定意見書

平成19年2月5日
東京高等裁判所第4民事部 御中

日本大学医学部社会医学講座法医学部門
教授 押田茂實(印)

第1 本書面の目的

1.
本件第1審の横浜地方裁判所第9民事部において,小職は伊藤順通氏(被控訴人)が提供したフォルマリン固定臓器・ブロック標本などに関してDNA型による鑑定を行ない,平成14年4月8日に中間報告書,次いで平成15年3月31日鑑定書を提出した。また,平成15年11月28日及び平成16年2月13日に宣誓を行ない鑑定人として証言した。平成18年4月25日に判決が言渡された,平成12年(ワ)第2704号 損害賠償請求事件の横浜地方裁判所第9民事部 裁判長裁判官 土屋文昭(裁判官 神原文美,裁判官 市村弘)の判決(以下,本件第1審判決とする)を拝見したところ,DNA型鑑定に関して,看過できない重大な問題を発見したのでこれを指摘し,高等裁判所における公正な判断を期待したい。

2.
小職は過去に多数の司法解剖や親子鑑定を施行し,裁判所でも証言してきているが,証言時の事実と甚だしく異なる判決を目の前にして,裁判官の医学的な知識の修得などについて裁判関係者の更なる精進を期待して,厳しい指摘をしておきたい。

第2 本件第1審判決のDNA型鑑定のとらえ方

1.本件第1審判決の押田鑑定についての記載

2.本件第1審判決が記載しているDNA型鑑定に関する大きな誤り
  本件第1審判決で施行されたDNA型に関する押田鑑定の全体の進行の中で,明らかな誤りを指摘できるのは,平成14年3月28日と平成14年4月4目付けの「電話(口頭)聴取報告書」の記載である(文中下線は小職による)。

(ア)平成14年3月28目付けの「電話(口頭)聴取報告書」
 本文 上から3行目
    ホルマリン漬けのブロックについては,困難であり,ブロック間で異なるDNAが検出されており,鑑定の当初に提出者に確認した「同一人のものか」ということについては何も返答をもらっておらず,異なるDNAが検出された時点で鑑定を終了するということであるならば鑑定書を作成することは可能です。・・・

(イ)平成14年4月4日付けの「電話(口頭)聴取報告書」
 本文 上から2行目
    ブロック間で異なるDNAが検出されたことも鑑定の当初提出者に確認した「同一人のものか」ということについて未だ確認できていませんが,・・・・

 このように平成14年3月28日と平成14年4月4日付けの「電話(口頭)聴取報告書」に記載されているが,この文書について平成15年11月28日の鑑定証人尋問の際に初めて拝見したのであり、尋問中に短時間提示されただけであった。

    「平成15年11月28日 押田鑑定人証言記録 51頁」
    平成14年4月4日午後4時42分付けの電話聴取報告書を示す
      平成14年4月4日午後4時42分に,あなたとここの書記官が電話で応対したという記録なんです。これは書記官が作成されてます。この中に,あなたがこの鑑定の経過の問い合わせに対して,もし全部を鑑定するということになると×××万はかかりますし,鑑定終了は9月ごろになると思いますと言ってるわけです。その旨を文書でいただけますかと裁判所は言っているんです。あなたは,来週8日までには送信できると思っていますと。つまり鑑定の経過について,ファクシミリでこういう経過ということを裁判所に報告できるということをお答えになっているんですね。
        いや,そうじゃなくて,その事情ですよ。事情をやり取りしてると。いや,この文書は初めて私は拝見しましたけれども。私は見ておりません。

その際にも発言しているが,鑑定人(小職)が理解している本件DNA型鑑定の経過と食い違う書類の出現にとまどっており,なぜこのような書類が公判に提出されているのか,理解できないままに尋問に応じていた。

    「平成15年11月28日 押田鑑定人証言記録 53頁」
    平成14年4月4日付電話聴取報告書を示す
    この2行目に,ブロック間で異なるDNAが検出されたこともと書いてあります。
      それについてはいまだ確認できておりませんがと書いてあります。よく読んでいただきたい。
    あなたの裁判所に対する発信として,平成12(ワ)第2704号事件の鑑定の進捗状況について先日報告しましたし,ブロック間で異なるDNAが検出されたことも鑑定の当初提出者に確認した「同一人のものか」ということについていまだ確認ができていませんが・・・。
      これは私が作った文書じゃありませんので、一言一句正確かどうかは分かりかねますんで,そういう報告をしたという電話をかけたことはあるでしょう。私は覚えておりませんけれども.そういう記録があるということであって.私が書いたファクスは全部一言一句チェックしておりますので趣旨は正確だと思いますけれども,それはそういうふうに書記官が受けたというだけであって,その一言一句正確かと音われると.ちょっと私も判断しかねます。
    先ほどの平成14年4月4日の裁判所とあなたの電話のやり取りの中で,あなたはブロック間で異なるDNAが出ていますということを裁判所に話したことがありますが,どうですか。
      記憶にありません。

結果的には,この文章は,次のような専門的な分野の電話連絡であるため,大きな誤解を生じていたと推定される。

    ブロック標本間で異なるDNAが検出されているところ,(判決文 51頁9行目)

この文章は,「(妻と3人の息子より)推定された亡久保幹郎氏のDNA型」とブロック標本間で異なるDNAが検出されている という趣旨であり,一つのブロックと他のブロック間で異なるDNAが検出されているということではない。
このことは,平成14年4月8日に三輪書記官宛に小職が出したFAX(末尾に添付)で次のように記載されていることでも明かである。

    〜「補足説明」2)
    Aどのブロック標本が「推定された亡久保幹郎氏DNA型」とくいちがうのか,つまりくいちがうブロック標本は1種類なのか,多種類なのか〜このためには全てのブロックからDNAを抽出してDNA型を検査しなければならず(簡単に検査結果が得られるとは考えられない),更に半年〜1年の期間,追加検査料約×××万円程度が必要と推定される。・・・

なお,平成15年12月17目付伊藤順通訴訟代理人弁護士斎藤榮ほかからの,「鑑定人に対する書面質問事項」(末尾に添付)では,

    鑑定人は平成14年4月4日午後4時42分頃,鑑定経過に関する裁判所からの電話による問い合わせに対して「ブロック間で異なるDNAが検出された」と回答しているが,具体的にどのブロックでどのようなDNAが検出されたのか。・・・・

と問われ,平成16年1月30日付け,「鑑定人に対する書面質問の回答」(末尾に添付)

    裁判所からの問い合わせに対して,この事頂の質問に記載のごとく回答した記憶は無い。鑑定人が書頬で回答した記憶も無いし、保存書類も存在していない。

と記載しており,この事項に関しては一貫して鑑定人が同じ主張をしていることが明らかである。

平成14年3月28日付けの「電話(口頭)聴取報告書」に記載されている

  本文上から6行目

    異なるDNAが検出された時点で鑑定を終了する

という文章も,親子鑑定一般では,「(妻と3人の息子より)推定された亡久保幹郎氏のDNA型」とブロックから異なるDNAが(2種類以上)検出された時点で鑑定を終了するというDNA型親子鑑定の原則について説明しており,ブロック間で異なるDNAが検出された時点で鑑定を終了するということではない。

このことに関しては,「平成16年2月13日 押田鑑定人証言記録 50頁」

    先生は,検査の必要性は感じていたんですか。
      いや,ですからその前に,鑑定書を読んでいただければ書いてありますけれども,1つで否定された場合はこれは突然変異もあり得るということで.私どもも親子鑑定のときには1個の否定だけで孤立否定というんですけども,それは出さないようにしてるんですね。だから 2つ以上、複数以上が突然変異を起こすということはないわけですから,だから2つ以上が確認された以上 それ以上検査を続けるのはもう必要がないと科学者として判断しているわけで。

と記載されており,明らかに一般的な親子鑑定の原則を説明している。

(ウ)平成14年3月28日と平成14年4月4日付けの「電話(口頭)聴取報告書」の記載
 このように平成14年3月28日と平成14年4月4日付けの「電話(口頭)聴取報告書」の下線の部分の記載は,専門用語の電話の連絡のために誤解を招く記載となっていたが,当事者の押田鑑定人が証言の際に初めてこの書類を見ており,その内容の正確性に関して十分検討できなかったために,誤解が大きく拡大したと推定される。このようなことが,十分把握されないまま,第1審判決に至っている。
 このような埋解では,現在の最先端の科学を扱うDNA鑑定の評価に重大な危険をもたらしかねないことは明らかであり,早急に再検討されることが必要である。

(エ)「平成15年11月28日 押田鑑定人証言記録 53頁」には,次のように記載されている。

    平成14年4月4目付電話聴取報告書を示す
    この2行目に,ブロック間で異なるDNAが検出されたこともと書いてあります。
      それについてはいまだ確認できておりませんがと書いてあります。よく読んでいただきたい。
    あなたの裁判所に対する発信として,平成12(ワ)第2704号事件の鑑定の進捗状況について先日報告しましたし,ブロック間で異なるDNAが検出されたことも鑑定の当初提出者に確認した「同一人のものか」ということについていまだ確認ができていませんが・・・。
      これは私が作った文書じゃありませんので,一言一句正確かどうかは分かりかねますんで.そういう報告をしたという電話をかけたことはあるでしょう。私は覚えておりませんけれども,そういう記録があるということであって,私が書いたファクスは全部一言一句チェックしておりますので趣旨は正確だと思いますけれども,それはそういうふうに書記官が受けたというだけであって、その一言一句正確かと言われると,ちょっと私も判断しかねます。
    先ほどの平成14年4月4日の裁判所とあなたの電話のやり取りの中で,あなたはブロック間で異なるDNAが出ていますということを裁判所に話したことがありますが,どうですか。
      記憶にありません。

一方,「平成16年2月13日 押田鑑定人証言記録 33頁」には,

    書記官はいろんな事柄を記録するプロなんで,そんなに根拠のないことは書かない。人間ですから若干の誤記とかはあるかもしれませんが。
      いや、これは結構長い電話をしたと思います。ここに書いてるような一、二分で終わるような話ではなかったと思います。

 「書記官はいろんな事柄を記録するプロなんで,そんなに根拠のないことは書かない。人間ですから若干の誤記とかはあるかもしれませんが。」と被告弁護人が発言しているが,実際に小生が証言した「平成15年11月28日 押田鑑定人証言記録」には明かな誤りが存在することも事実である。
 このような誤解を招きやすい「電話(口頭)聴取報告書」の記載」の危険性に関して今回ほど身にしみたことがないのも事実である。今回の民事事件ではもちろん,刑事事件では警察関係者の「電話聴取記録」に日常的に接しているが、過去約40年間にわたり法医学者としてベテランの域に入っている日本法医学会前関東代表理事である小職が初めて経験した怖さである。

    エ 押田鑑定の信用性 (第1審判決 62頁)
    A押田鑑定人は,鑑定書を提出する以前,裁判所に対し,ブロック間で異なるDNAが検出されているとの報告を行っていたにもかかわらず,この点に関する説明を鑑定書に記載しておらず,鑑定人質問においても合理的な説明はなく,鑑定書に検出紙の写真が添付されているのは本件ブロック標本18個中で「No.2」を試料としたもののみであるから,検査対象とした別のブロック標本については異なる結果が出ているのに報告していない疑いを払拭しきれないこと,

このように見てくると、第1審判決のこの字句を看過できないことは明らかであろう。

3.本件鑑定書添付写真の検出紙の発色について

本件第1審判決では,本件鑑定書添付写真の検出紙の発色について,次のごとく記載している。

ところが、同じ本件第1審判決の中で,

と矛盾した記載となっており,発色していないのか,発色が極めて薄いものであるのかはっきりしない。 Cドット又はSドットが肉眼で見て発色していない場合には判定不能となり,発色が極めて薄いものである場合には判定が可能になり,この両者には大きな差があることは,明らかであろう。
 この件に関しては,2回にわたる鑑定人証言が終了した後に発行した,単行本「死人に口あり(押田茂實著,実業之日本社,平成16年11月19日発行,70-72頁(コピーを末尾に添付)」に小職は次のように記載している。

この本件第1審判決の記載が看過できない理由としては,平成15年11月28日の鑑定人証言記録の末尾に綴じられているカラー写真を見れば一目瞭然であろう。「DNA鑑定が不可能又は著しく困難となっていた鑑定試料について,無理に型判定を行って鑑定結果を報告した可能性」が無いことは当然である。

4.今後のDNA鑑定について

 本件DNA鑑定を引き受けた平成13年当時のレベルでは,本件事件当時の平成9年頃のフォルマリン固定臓器でも十分STR型の判定はできたのであり(予備実験で確認されていた),4人の血液型のDNA型検査と併せて約××万円(予測では3カ月で鑑定書提出)と予測されていたのに,本件第1審判決(50−51貢)記載のごとく,約2年経過したのである。その大きな要因は,通常のフォルマリン固定臓器・ブロックの作成方法と異なる要因があるのではないかと何回も裁判所を通して問い合わせたが,詳細が明らかになっていない。
 このため,鑑定書記載の結果に至っており,殊に平成14年末より試薬の入手困難(現在PM型とHLADQ1型の検査用試薬は製造中止となっている)となり,現時点ではPM型とHLADQ1型の同様な検査は不可能となっている。
 本件鑑定書を提出後,フォルマリン固定臓器・ブロックの鑑定依頼が他施設より多数来たため,この分野の研究の必要性が高まり,DNA増幅法などの改良と新しいSTR分析法に関して研究を進め,格段の進歩した状況にある(しかしながら,現実にはこのようなフォルマリン固定臓器・ブロックの鑑定などを依頼される先端的な研究施設はかなり限定されている)。

1)DNA増幅法などの改良
 フォルマリン固定臓器・ブロックなどを含めた陳旧・微量な法科学的な資料からのDNA抽出・増幅法には種々の方法があるが,DOP−PCR(Degenerate oligonucleotide−primedPCR)法や全ゲノム増幅法などについて検討されており,STRの繰り返し構造の短い型に関しては次に述べるSTR法の検査が容易に行なわれるようになっている。
 参考までに,平成6年(2004年)に雑誌「DNA多型」(日本におけるDNA型研究者の発表する雑誌)に掲載された論文「DOP−PCR法によるDNA多形の検出」を末尾に添付した。(HP管理人注:HPでは掲載を省略。)

2)新しいSTR分析法
 従来のPM型とHLADQ1型の同様な検査は不可能となったので,その後新しいSTR型の検査を導入している。STR多型についてAmpFISTRGIdentifilerTMPCRAmplificationKit(Applied Biosystems社)を用いてUsers’ Manualに従ってD8Sl179,D21Sll,D7S820,CSF1PO,D3S1358,TH01,D13S317,D16S539,D2S1338,D19S433,VWA,TPOX,D18S51,D5S818,FGAの15STR座位とAmelogenin座位のPCR増幅を行ない,多型検出にはABI PRISM(R)310ジェネディックアナライザを用い,GENESCANソフトで型判定の解析を行っている。
 この方法を用いたある刑事事件でのDNA型鑑定(鑑定資料は血液と7年経過した精液)では,15座位の常染色体STR多型(D8S1179,D21Sll,D7S820,CSFIPO,D3S1358,THOl,D13S317,D16S539,D2S1338,D19S433,VWA,TPOX,D18S51,D5S818,FGA)の検査が可能であり,この15座位の表現型の出現頻度をそれぞれかけあわせると,試料DNAの出現頻 度は約1咳(がい)人に1人(約0.00000000000000000001=10-20)となった。
 また,別の民事関係の親子鑑定(血液)では,この15座位の表現型の出現頻度をそれぞれかけあわせると,試料DNAの出現頻度は約60咳(がい)人に1人となった。
 フォルマリン固定臓器・ブロックの鑑定の際には,このようなSTR型の検査がそのまま容易に行なわれる状態ではないと推定されるが,少なくとも平成13〜15年当時の状況とは大きく異なっており,新しいDNA型鑑定法で解析すれば,「ドットが見えるか否か」のレベルではなく,明瞭な結果が提供できることは明らかである。
 いずれにしても,このような先端的なDNA鑑定結果が,

    「DNA鑑定が不可能又は著しく困難となっていた鑑定試料について,無理に型判定を行って鑑定結果を報告した可能性を否定することができないというべきであるから,その鑑定結果を到底採用することはできない。」

と誤って判断されることはないと思考される。

第3 まとめ

 「ブロック間で異なるDNAが検出された」は裁判所書記官の誤認による記載であり,「(妻と3人の息子より)推定された亡久保幹郎氏のDNA型とブロック標本間で異なるDNA型が検出された」が正しく,「異なるDNAが検出された時点で鑑定を終了する」も裁判所書記官の誤認による記載であり,「(妻と3人の息子より)推定された亡久保幹郎氏のDNA型とブロックから異なるDNA型が(2種類以上)検出された時点で鑑定を終了する」が正しい。これらの誤った記載に基づき、「検査対象とした別のブロック標本については異なる結果が出ているのに報告していない疑いを払拭しきれない」とした1審判決は明らかな誤りである。
  PM検査用の検出紙のSドット及びHLADQAl型の検出紙のCドットが肉眼で見て発色していない場合には判定不能となり,発色が極めて薄いものである場合には判定が可能になり,この両者には大きな差があることは明らかであろう。平成15年11月28日の鑑定人証言記録の末尾に綴じられているカラー写真を見れば一目燦然であり,「DNA鑑定が不可能又は著しく困難となっていた鑑定試料について,無理に型判定を行って鑑定結果を報告した可能性」が無いことは当然である。
 フォルマリン固定臓誰・ブロックのDNA型鑑定については,少なくとも平成13〜15年当時の状況とは大きく異なっており,新しいDNA型鑑定法で解析すれば,明瞭な結果が提供できることは明らかであり,裁判所の要請があれば格段に進歩したDNA型検出法による再鑑定を施行することは可能である。
 客観的・医学的な事実を無視した本件第1審判決に接したことは甚だ心外であり,裁判関係者がDNA鑑定について正確な知識に基づき,このような誤りを早急に訂正することを心より要望する。

以 上


押田意見書の要旨:次の各点に集約される。

  1. 第一審判決文62頁に記載されている「押田鑑定人は、鑑定書を提出する以前、裁判所に対し、ブロック間で異なるDNAが検出されているとの報告を行っていた」事実はない。これに関する裁判所の記録は、裁判所書記官による専門的会話の聞き間違いである。正しくは「妻と3人の息子から推定された亡幹郎のDNA型と、ブロック標本の間で異なるDNA型が検出された」であり、そのようにFAX記録が残っている。

  2. 横浜地方裁判所の電話(口頭)聴取報告書(平成14年3月28日付)にある「異なるDNAが検出された時点で鑑定を終了する」は、「妻と3人の息子から推定された亡幹郎のDNA型と、ブロック標本の間で異なるDNA型が2種類以上検出されれば、これは突然変異によるDNA型の違いではないので、その時点で鑑定は終了する」というDNA親子鑑定の原則を述べたものである。この点について、自分は鑑定人尋問の際にも説明している。

  3. 上記、1と2から「検査対象とした別のブロック標本については、異なる結果が出ているのに報告していない疑いを払拭しきれない」とした第1審判決は、明らかな誤りである。

  4. 第一審判決文62頁の 「@SドットないしCドットが発色していない場合についてまであえて型判定を行っていること・・・ B Cドット又はSドットの発色が認められないか.発色が極めて薄いものであるのに」は、相互に矛盾した記載であるのみならず、発色していないのか、発色が極めて薄いものであるのか、はっきりしない。Cドット又はSドットが肉眼で見て発色していない場合は判定不能となり、発色が極めて薄いものである場合は判定が可能であり、この両者には大きな差がある。

  5. 検出紙を撮影した写真につき、印画条件を変えて現像した「印画条件変更写真」を見れば、「無理に型判定を行って鑑定結果を報告した可能性」はないのは当然である。

  6. 客観的・医学的な事実を無視した本件第1審判決に接したことは甚だ心外であり,裁判関係者がDNA鑑定について正確な知識に基づき,このような誤りを早急に訂正することを心より要望する。


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