印画条件変更写真


【解説】
「印画条件変更写真」とは、DNA鑑定人・押田教授が用いたドット・ハイブリダイゼーション法(PolyMarkerプラスHLADQA1)において、 神奈川県警と監察医側から、基準となるSドット(Standard Dot)及びCドット(Control Dot)の「発色がない」 という主張があり、それに対して、押田教授の側から、「発色している。鑑定書の添付写真は、 プリントとコピーの過程で発色していないように見えているだけだ」という説明があり、プリント条件を変えて裁判所に提出された写真をいう。証拠資料としては、DNA正式鑑定書の一部をなしている。

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製造元(Applied Biosystems社)の取扱説明書翻訳文

この点について、横浜地裁の判決文は、「印画条件変更写真」の存在を全く無視し、次のような判断をしている。

    「PM 検査用の検出紙のSドットないしHLADQA1 型の検出紙のCドットの発色を視認できない場合には,型判定すべきでないと定める検出紙の取扱説明書に反し,SドットないしCドットが発色していない場合についてまであえて型判定を行っている(判決文P61〜62)」
「印画条件変更写真」は、鑑定人尋問の際、土屋裁判長の目の前で、押田教授より提出されたものだ。なぜ、土屋裁判長は、この写真の存在について、自らの体験の一部であるにも係らず、判決文のなかで全く触れず、上記のような判断をするのか、筆者は理解に苦しむ。存在を失念しているか、故意に無視しているかのどちらかであろう。

「印画条件変更写真」は、原告側の最終弁論準備書面のなかでも、次のように触れているが、 なぜ、土屋裁判長は、この点について考慮を加えていないのだろうか。(この一点だけでも、判決の杜撰さを指摘しなければならない。)

    「PM検査のSマーク,HLADQA1検査のCマークの発色がない」とする点について
    被告神奈川県は,おもに,PM検査で標準となるSマークおよびHLADQA1検査で標準となるCマークの発色が,鑑定書添付の写真上は見えづらいことから,「発色がない」と決めつけている。しかし,発色の有無は肉眼検査である。鑑定書の写真は,全体の発色状況がわかりやすいように現像されたものを添付したものである。押田鑑定人が,後に同じネガフィルムを濃く焼き付けたことにより,PM検査のSマークおよびHLADQA1検査のCマークの発色は写真上明らかとなった(同鑑定人提出の「鑑定書(平成15年3月31日付)写真」と「印画条件変更写真」)。そもそも試験紙に発色がなければ,いくら写真ネガを濃く焼き付けても,写真上青い発色はみえるはずはない。「印画条件変更写真」では,写真14のPM型のSマーク,写真16のHLADQA1型のCマーク,写真17のPM型のSマークは,いずれも青く発色していることがみてとれる。しかし例えば「印画条件変更写真」を鑑定書に添付するとなると,全体がやや濃すぎるために鑑定書添付の写真となっているのである。

土屋裁判長は「中間報告書」提出のいきさつについても、「押田教授が自ら進んで提出した」と監察医側弁護士の主張に沿った判決文を書いているが、これは事実に反する。DNA鑑定が遅れているため、当時の大坪裁判長が「中間的なものなら出せるということなので、出してもらうことにした」と公判で宣言し、提出を要請したのである。(筆者は傍聴席から、その様子を見ていた。むろん、監察医側の斉藤弁護士も、その場にいたのである。なぜ、監察医側弁護士は事実に反する主張をするのか、裁判所も事実経緯を確かめず、「鵜呑み」とも取れる判断をするのか、筆者は理解できない。)

なお、上述の関連リンクページにあるように、SドットもCドットも、基準ドットであるために、DNA鎖と反応しても薄く発色するよう、もともと作られている。発色した場合は型判定が可能であり、それよりも濃い発色があれば陽性、薄ければ陰性という判断が行われる。「発色していない」と「薄く発色している」とでは雲泥の差があり、全く違う状況であることに留意願いたい。

筆・HP管理人


    ※画像を拡大して見るには、それぞれの画像をクリックして下さい。

鑑定書(平成15年3月31日付)写真 印画条件変更写真
写真14 PM型(Sドット) ブロック標本(No.2 心臓)
写真16 HLADQA1型(Cドット) ブロック標本(No.2 心臓)
写真17 PM型(Sドット) ホルマリン固定臓器



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